佐藤健×長澤まさみ×森七菜で映画化『四月になれば彼女は』。ヒットメーカー川村元気氏が描く”恋と愛”

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/4

四月になれば彼女は
四月になれば彼女は』(文藝春秋)

 3月22日(金)に公開された、映画『四月になれば彼女は』。佐藤健主演、共演には長澤まさみや森七菜らが名を連ねる豪華な作品です。原作は映画監督やプロデューサー、小説家など多方面で活躍するヒットメーカー・川村元気氏の『四月になれば彼女は』(文藝春秋)。『億男』ではお金、『百花』では母と息子の絆など人々にとって重要なものをいつもテーマにしてきた川村氏。本作は恋愛について正面から描いています。

 主人公は佐藤演じる藤代。彼の大学生時代と現在、二つの時間軸と、とある人から藤代に当てた手紙で本作は進んでいきます。藤代は大学時代、写真部に所属。三年生の時に新入部員・春(森七菜)と出会います。ふたりは次第に惹かれ合い、恋人同士に。多くの時間を共に過ごします。一方現代の藤代は精神科医。獣医である弥生(長澤まさみ)との結婚を控え、式場で結婚式の相談をしているところから現代の物語は始まります。現代の藤代は冷静なタイプ。弥生とは絵に描いたような素敵なカップルですがどこか淡泊で、弥生の妹・純にも「おにいさん、興味あります?(おねえちゃんのこと)」と突っ込まれてしまいます。

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 本作の肝は会話、というか登場人物たちが藤代にかける言葉にあると思います。自分の欲しいものが見つからない、こだわるものが何もないという藤代。そんな彼に弥生と春だけでなく友人のタスクや後輩医師の奈々など、あらゆる人が紡ぐ言葉たち。その言葉が藤代に、そして読み手に気付きを与えます。どれも重要な台詞として盛り上がりとともに描かれるのではなく、さらっと描かれているのも特徴。誰かを愛するというのはどういうことなのか、私たちに語りかけてくれます。例えば私が一番心に残ったのは、「人間ってのは本当に怖いですよ。憎んでいる人より、そばにいて愛してくれる人を容赦なく傷つけるんだから」という言葉ですが、読み手によって心に刺さる言葉は違うのではと思います。

「始まった時は永遠に続くと思っていた愛や恋が失われてしまうのはなぜなのか?」

 この普遍的な問いの上に、切なさをもって続いていく物語。何を考えているのかよくわからない藤代の雰囲気が、女性にとって最初は魅力的に映るけど長く付き合い続けると不安の種になる。端的に言ってしまえば三人の関係はわかりやすくもあり、共感できる人も多いのではと思います。またチェコ・プラハ・ウユニから届く春の手紙の情景描写も秀逸で、写真を眺めているような気持ちになれるのも本作の魅力です。特に詳しくは書けませんが、春との思い出の地であるとある場所を、弥生のために藤代が訪れるラストの疾走感は見事。ぜひこのラストにたどり着いてください。

文=原智香

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