もし日本を核ミサイルが襲うとすれば、最初に狙われるのはどこか?! その被害規模はどれくらい?

社会

更新日:2017/11/6

『東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる(講談社+α新書)』(兵頭二十八/講談社)

 10月5日(木)ブルームバーグは、「北朝鮮がソウルと東京を核攻撃した場合、最大で210万人が死亡、770万人が負傷する恐れがある」とする北朝鮮分析サイト「38ノース」のコメントを報道した。

 しかしである。いったい北朝鮮はどれほどの核軍事力を備えていて、日本に北からの核ミサイルが降る日は本当に近いのか? その答えを『東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる(講談社+α新書)』(兵頭二十八/講談社)に求めてみよう。

 本書は、元自衛官の軍事評論家、兵頭二十八氏が、「将来、万が一にも日本が核攻撃を受けたら」をリアルにシミュレーションした内容だ。その場合、「アグレッサー(攻撃者)」はどの国で、日本のどの地域に対して、どんな種類の核爆弾が何発ほど使用され、被害状況はどのようなものになるのか? また、核攻撃から命を守るためにできることは何か、といった核防災の知恵までが記されている。

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■北朝鮮からの核の先制攻撃はあるのか

 では、気になる北朝鮮について著者はどう見ているのか。本書の結論から言えば、北朝鮮が核による先制攻撃を仕掛けてくる可能性は極めて低いという。その根拠の数々はぜひ本書でご確認いただきたいのだが、要は核軍事力においては、圧倒的に米軍側に軍配が上がるからだ。
 ただ、もちろん油断は禁物だ。北朝鮮がなかば捨て身の核行動に舵を切った際の想定も本書はしっかりと押さえている。

 では著者が本丸と想定する「アグレッサー(攻撃者)」はと言えば、ズバリ、中国なのである。中国が将来、対米・日核戦争に踏み切った際、まず日本で狙われるのが、戦略的な理由から「横須賀基地」だという。その後、戦局に応じて、本書タイトルにもあるように日本国内で標的にされると予測されるエリアとその理由が詳述されていく。

■なぜ広島市と長崎市は復興できたのか

 本書には他にも、核爆弾の種類や、米国やロシアを頂点とする核軍事力と中国や北朝鮮との比較、また核を使った戦術などに関しても素人にわかりやすく記されている。
 筆者にも常々疑問があった。例えば、広島市と長崎市は今ではすっかり復興している。なぜ、ウラン弾(広島)、プルトニウム弾(長崎)という2種の原爆をそれぞれ被弾したのに、両地は人が二度と住めなくなるような汚染を免れたのか?

 本書によれば、爆心地を不毛化させるか否かは、核爆弾を爆発させる高度で調整されるという。広島と長崎の場合、どちらも爆発は高度500メートル付近(著者調べ)と推定され、その結果、放射性物質は上空へ飛散して濃度が希釈されたことで土地汚染は免れたのだそうだ。もし地上付近で爆発していれば、多くの人命が失われた挙句、土地までもが半永久的に汚染され、人の住めない不毛地となる運命をたどることになる。

■「核のドゥームズデイ」に備えよ

 もし広島・長崎が焦土のままであれば、米国に対する世界からの非難は今なお続いているはずだ。つまり、核を実践的に扱える軍事力を持った国は、使用後の顛末や将来に及ぶ国際世論なども考慮した上で、破壊力をコントロールするのだという。

 逆に言えば、アグレッサーが自暴自棄になり理性を失ってしまえば、地表付近での核爆発をもくろみ、国土を半永久的に焦土・廃墟化させることも可能だということになる。

 そして著者は、アグレッサーがそこまで追い詰められた状態を「核のドゥームズデイ」と呼ぶ。

 そんな日が来ることがないよう祈るばかりだが、「平和を祈って何の備えもしないのなら、それは『来たざるを恃(たの)む』ことに他ならない」と著者は記している。つまり祈るばかりではなく、核戦争のリアルな情報から目を背けずに、しっかりとシェアして備えよ、というわけである。

 本書の最後に著者は、「核のドゥームズデイ」を避けるための方策を記している。実現には、多くの民意の同調が必要だろう。

文=町田光