日中共同創作が生み出した王道異能者バトルアクション『EXTENSION WORLD』に刮目せよ! 作者はあの大物ホラー作家の娘…

文芸・カルチャー

2017/11/22

『EXTENSION WORLD 1 発現』(古谷美里/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『EXTENSIONWORLD 2 覚醒』(秋風清/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 世界のそこかしこでテロや紛争が頻発し、新たな大戦の足音が忍び寄るこの時代に、国境を越え、人種を越え、世界の危機に挑む七人の若き異能者たち――王道の新ヒーローが誕生した。

 日本と中国の出版社による共同チームが、映像化やゲーム化を含めた全方位のグローバルコンテンツを作り、相互理解と日中友好を目指す世界初のプロジェクト“Discover 360°”。およそ5年の歳月を経て生まれた作品第1弾が、小説『EXTENSION WORLD 1 発現』(古谷美里/ディスカヴァー・トゥエンティワン)&『EXTENSIONWORLD 2 覚醒』(秋風清/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。

 同じ登場人物・設定のもと、1巻を日本人作家が日本人を主人公として執筆し、第2巻を中国人作家が中国人と主人公として執筆したという異例の作法で生み出された本作。1巻を執筆したのは、『リング』『らせん』など日本屈指のホラー作家・鈴木光司氏の娘である古谷美里氏。小説初挑戦とは思わせない、リズムのある文章と臨場感あふれる描写で、世界狭しと疾走するバトルストーリーを一気に読ませてくれる。

 この壮大な物語の発端である『発現』編のあらすじを紹介しよう。

 少年時代の不幸な事件をトラウマに生きる、無口な高校生の宮本瞬は、謎の組織・SNP研究所に拉致され、改造手術によって特殊細胞・アカルデミノを埋め込まれてしまう。アカルデミノによって超能力を身に着けた瞬は、SNP研究所の不穏な動きを察知し逃亡。家族と離れ、記憶を消し、潜伏生活を送っていた。

 数年後、闇社会の地下格闘技大会に出場した瞬は、研究所時代の仲間・高誠と出会う。高に導かれ、記憶を取り戻した瞬は、自分と同じ境遇で超能力を持つこととなった仲間たちと出会う。自分たちを改造した組織が世界征服を目論み、今まさにその計画が始まろうとしており、その計画に絡んで、瞬の実の妹・杏が誘拐されていることを知った瞬は聞かされる。瞬と6人のアカルデミノ能力者たちは、強大な組織にたった7人で立ち向かう――。日本~中国(敦煌)~シンガポールへと物語は展開し、若者たちの世界はエクテンションしてゆく。戦いの旅の先にある、組織の真の目的とは何か? 7人の若者たちは世界を救えるのか?

 日本人の瞬と悟司、中国人の高、ドイツ人のブルーノ、韓国人のキム、タイ人のメイ、そして国籍不明の白人女性エマという多彩な国籍人種で構成されたチーム。高速移動、未来視、電脳リンク、思考感知、重力制御、超高感度の五感、他者の超能力コピーという7つの超能力。世界制服を狙う悪の組織によって与えられた悪の力を、正義のために使い、戦いを挑むたった7人の戦士たち――そう、王道中の王道バトルストーリーなのだ。

 そして、その王道の物語は、エンターテインメントであると同時に、日中共同チームの強いテーマにもつながる。劇中にこんな場面がある。

 主人公の瞬は、少年期に友人の隆から「自分は実は中国人で本名は張道明というんだ。ネットで日本人は中国人をよく思わないと読んだけど、友だちになれるかな」と打ち明けられる。

「いいか。中国人っていったって同じ日本人だ。日本人と何も変わらない。同じ血がながれてる」
「同じ血?」
「ああ。俺にも隆史にも同じ血が流れてるんだよ」
 瞬はそう言って隆の方に腕を差し出した。薄い皮膚の下には青く太い血管が盛り上がっている。隆はその血管にそっと手を触れた。

 国や肌の色ではない、その内に流れる赤い血。主人公たちは、互いの出自へのこだわりなどなく、与えられた力と運命の導くままに、心を通わせ仲間となってゆく。命に色はなく、心と心が通じ合えば、人と人は手を取り合うことができるのだと、この物語は読者に熱く訴えかける。

 同時に「血」はこの物語の因果や過酷な宿命のカギとなる重要なファクターでもある。壮大な戦いの果てに、読者は、その哀しく切ない血の涙を目撃することだろう。

 そして、『発現』編の戦いから数年後の世界を描いた『覚醒』編では、瞬たちが新たな戦いへと巻き込まれ、物語はアジアを飛び出し、欧州・ギリシャへと広がってゆく。

 続編としてのストーリーだけではなく、1巻の古谷氏と2巻の秋氏の文体や描写の違いにも着目して読むことで、日中の創作方法の違いなども味わってほしい。

 広がり始めた瞬たちの新しい世界へ飛び込むのは、今だ。

文=水陶マコト