「あぶないひとって、どんなひと?」新学期が始まる前に通学路などの見直しを。自分の身を自分で守る、子ども目線の防犯絵本

出産・子育て

公開日:2022/3/25

あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本
『あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本』(清永奈穂:文、石塚ワカメ:絵/岩崎書店)

 子どもの誘拐事件をテレビやネットで見かけるたびに心が痛みます。わが子には「知らない人についていっちゃダメ」と言い聞かせ、防犯ブザーを持たせる、などの防犯対策をするつもりですが、本当にそれだけで大丈夫でしょうか。中には知り合いによる犯行もあるというので、何をどのように気をつけたらいいのか分からなくなります。

 そんな時に読みたいのが、『あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本』(清永奈穂:文、石塚ワカメ:絵/岩崎書店)です。

 子どもが危ない目に遭うのは、おそらく1人でいる時ですよね。そういった狙われやすい状況を防ぐにはどうしたらいいのか、万が一の場合にどんな行動を取れば安全を確保できるのか。本書は、安全教育のプロが犯罪者の心理に基づき、子どもが自分の身を自分で守れる方法や、普段から備えられるアイデアをたくさん紹介しています。

 絵本形式で堅苦しくなく、わかりやすいイラストで、子どもが犯罪を“自分事”として考えられるのが大きなポイントです。

advertisement

危ない人ってどんな人? わが子の認識、このままでは本当に危ない!

あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本

 危ない人についていってしまう…そんなところから子どもへの犯罪は引き起こされます。そこで知っておきたいのが、危ない人の見分け方です。一口に「危ない人」と言われても、大人だってどういう人のことを言うのか、なかなか説明は難しいもの。うちの子、「危ない人」への備え、大丈夫でしょうか。

 本書では、「あぶないひとって、どんなひと?」といった問い掛けがあり、子どもの考えを自然と聞き出すことができます。筆者も5歳の息子に聞いたところ、「サングラスを掛けている人が危ない感じがする」など、見た目の怪しさで判断している様子。これでは、優しく声を掛ける人や女の人にはついていってしまいそう…。

 実際には「お母さんが交通事故に!」「図書館はどこ? 一緒に行ってくれない?」など、犯罪者もいろいろと工夫をして声を掛けてくるようです。本書では、イラストとともに、「危ない人の覚え方のコツ」が紹介されていて、犯罪者の具体的なイメージをわかりやすく知ることができます。

 本書を読み、子どもの正直な意見を聞いて「このままではダメだな」と気づくことができたし、「犯罪者ってここまでするのか」と、その巧妙な手口に大人も驚きました。また、おそろしいことですが、危ない人から見た“好みの子”もいるそうです。あなたのお子さんはどのタイプですか? 本書でチェックしてみましょう。

危ない場所は「ひ・ま・わ・り」。通学路やお散歩道をチェックしよう

あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本

 危ない場所を避けて通れば、危ない人との遭遇率を下げられるかもしれません。本書では、危ない人がどんなところから狙ってくるのか、“たとえば、お母さんに気づかれずに家で自分がおやつを狙うなら…”といった子ども目線にあわせた例を紹介しながら、犯罪者の心理と行動を説明しています。

 それによると、犯罪者が潜んでいるような危ない場所の特徴は、「ひ・ま・わ・り」だとか。

ひ=ひとりだけになるところ
ま=周りから見えにくいところ
わ=別れ道、わき道や裏道の多いところ
り=利用されてない道、空き地や公園など人が誰もいないところ

 こんなふうにワードで覚えれば、いざという時にも思い出せるのではないでしょうか。

 本書には、街を探検しながら危ない場所を探せる「おさんぽあんぜんマップ」も紹介されているので、これを機に、通学路やお散歩道を見直すのも良さそうです。

入学や進学の前に、安全対策の見直しを

 さらに本書には、万が一、危ない人に声を掛けられたら、どんな行動に出るのがいいのか、具体的な方法が紹介されています。そのひとつとして、「いやです、だめです、いきません」と断れば、多くの犯罪者はあきらめることが数多くの研究で分かっているそう。また、子どもの頃に身につけた「断る力」は、やがてSNSや身近な人から危ないことをされた時、躊躇せずきっぱり断れるようになり、大人になってからも有効だとか。

 また、万が一のことがあっても子ども自身が悪いわけではないことや、自分を大事にしてくれる大人もたくさんいることを伝えるのも、大事なこと。日頃から親子で話しやすい雰囲気を作りつつ、安全マップの作成、逃げる時の練習など、いざという時のための備えを万全にしておきたいですね。子どもが自分の身を自分で守るため、入学や進学の前に読んでおきたい1冊です。

文=吉田あき

あわせて読みたい