つらさ、原因、治す方法…「うつ」を誤解したまま対処するのは悪化の原因に?/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

暮らし

公開日:2022/11/9

はじめに

 うつは大変つらい病気です。そのため、本人がひとりで乗り越えるのではなく、家族の力を借りながら回復していきたいものです。

 そして家族も、大切な人がうつになって苦しんでいる姿を見ると、回復してほしい、力になりたい、と手を差しのべようとします。

 本書は、このような、うつを抱える本人と、家族(周囲の人)のための本です。

 うつ自体は、かなりポピュラーな病気となり、治療法もある程度確立してきています。きちんと対応すれば、それほど恐ろしい病気ではありません。

 しかし、うつは、本人やその家族に正しく認識されていないことが多く、その誤解が原因で、悪化しやすいという側面があります。

 私たちは、現場で長年サポートするなかで、うつ病について、次のようなことに対する誤解が多いと感じています。

・うつの原因
・「死にたい気持ち」の原因
・うつのつらさ
・うつを治す方法
・うつが治るまでの期間

 これらのことを誤解したまま、自分なりの対処を繰り返していると、うつ病を悪化、あるいは長期化させてしまいかねません。また、家族が本人のために懸命に対応した行動も、「助け」ではなく「ストレス」になってしまうことがあります。

 そこで本書では、みなさんの誤解を解消し、本人が改善に向かい、現実的な行動が取れるような知識を紹介していきたいと思います。

 私たちはこれまで、うつで悩む多くのクライアントを支えてきました。その現場では、医学的な専門用語などを使わずに対応しています。これは、うつ病の本人は、病気の症状で思考が偏り、複雑なことを理解できないことに加えて、本人を支える家族も、強い不安を感じてパニックに陥り、普段より理解力が低下していることが多いからです。

 そのため本書でも、私たちが「現場で伝えている知識」をそのまま紹介しています。例えば、うつ病の定義や医学的区分にとらわれず、基本的にはタイトルのように、ひとまとめに「うつ」と表現してあります。他にも、現場で理解してもらいやすい「説明」や「言葉」を使い、大切なことは何度でも重複してお伝えしているので、専門家のみなさんが見たら少し違和感を覚えたり、しつこさを感じたりするかもしれませんが、それも、現場感覚を大切にしたかったためだとご理解ください。

 うつになった本人が苦しい症状を抱えているのはもちろんなのですが、うつになった本人を支えていくのも大変なことです。本書をもとに、うつについて正しく認識し、自分も大切にしながら本人を見守る、よりよい支援につなげていただけると幸いです。

2022年7月

下園壮太
前田理香

<第2回に続く>

『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』をAmazonで読む >

あわせて読みたい