ジョージ・オーウェル『1984』あらすじ紹介。現代の監視社会を70年前に予言!? 思想や言論が統制され自由が弾圧された世界

文芸・カルチャー

公開日:2023/6/27

 防犯の名目で街中に監視カメラが溢れ、SNSに上げた映像から逮捕者が出る…。本作『1984』はそんな監視社会化を70年前に予言したともいえる恐ろしい小説で、現在、再び脚光を浴びています。そこで本稿では、ジョージ・オーウェルの名作『1984』のあらすじを、ネタバレありでご紹介します。

1984

『1984』の作品解説

 本作はイギリスの作家、ジョージ・オーウェルによって1949年に刊行されたディストピアSF小説です。1949年の時点から想像した、全体主義国家によって監視社会化した近未来世界の恐怖を描いています。

「史上最高の文学100」に選出されるなど、欧米での評価が特に高いのが特徴で、出版から70年経った今もなお、世界の文学・思想・音楽をはじめとした様々な分野に影響を与え続けています。

『1984』の主な登場人物

ウィンストン・スミス:主人公。「真実省」に勤務。現体制の在り方に疑心を抱く。

ジュリア:「創作局」に勤務する女性。ウィンストンに告白し逢瀬を重ねる。

オブライエン:党の高級官僚。「ブラザー連合」の一員を名乗る。

チャリントン:骨董屋を営む老人だが、正体は思想警察。

ビッグ・ブラザー:オセアニアに君臨する独裁者。

エマニュエル・ゴールドスタイン:反体制組織「ブラザー連合」を率いる「人民の敵」

『1984』のあらすじ​​

 舞台は1950年代の核戦争を経た1984年。世界は3つの超大国、オセアニア、ユーラシア、イースタシアによって分割統治されており、この3国は暗黙のルールのもと、物資を浪費するための戦争を繰り返していた。

 どの国においても市民に自由はない。思想・言語・恋愛などあらゆる権利に統制が敷かれ、戦争により物資は常に不足し、プロパガンダを流し続ける、消すことができない双方向テレビ「テレスクリーン」によって、行動のすべてが監視されている。

「ビッグ・ブラザー」による一党独裁制が敷かれているオセアニアの「真実省」で働くウィンストン・スミスの仕事は、党に都合の悪い歴史記録の改ざん作業。歴史が絶えず改ざんされるため、オセアニア建国以前の旧体制や建国当時の記録に信憑性はなく、そもそも論理的思考ができないよう洗脳されている市民は、歴史について知ろうとはしない。

 だが、かねてから体制への不信感を抱いていたウィンストンは違った。「思想犯罪」と知りながら、骨董屋で買ったノートに自身が思索したことを記し、思考の整理を始める。そして「蒸発」したはずの人物が掲載された過去の新聞を見つけたことを契機に、体制への疑心が確信に変わる。

 さらに「憎悪週間」の最中に出会った、同じく体制に反発心を持つ「創作局」の女性、ジュリアから告白されたウィンストンは、ノートを買ったチャリントン老人の骨董屋で逢瀬を重ねる。そして、党内局の高級官僚でありながら反体制派であるオブライエンの手引きで、ふたりはエマニュエル・ゴールドスタイン率いる反体制組織「ブラザー連合」に身を投じる。

 ところが、すべては罠であった。オブライエンは体制側の犬であり、思想警察であったチャリントン老人の密告により、ウィンストンとジュリアは逮捕されてしまう。捕えられたふたりを待っていたのは処刑ではなく「愛情省」の尋問と拷問だった。処刑では殉教者として市民の心に英雄を生んでしまう。英雄化を防ぐためには、心よりビッグ・ブラザーを崇拝する状態に更生させ、社会に戻さなくてはならないのだ。人の持つ心の力を信じていると拷問に耐えるウィンストンであったが、悪名轟かせる「101号室」で徹底的に信念を打ち砕かれ、ついには身に覚えのない罪まで自白していた。

 凄惨な拷問の末、魂を失ったウィンストンは頭を空っぽにされた。そして、日常に戻された彼は、心からビッグ・ブラザーを愛していた。

<第78回に続く>

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