「男が部屋に1人侵入している」と教えてくれたおじさん。私は、恐怖で動けなくなり…【あかね空に照らされて】/意味がわかると鳥肌が立つ話⑨

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/27

意味がわかると鳥肌が立つ話』(蔵間サキ:編著、toai:絵/Gakken)第9回【全13回】

累計460万部を突破した「5分後に意外な結末」の公式ライバルシリーズ「5分後の隣のシリーズ」より、『意味がわかると鳥肌が立つ話』をお届け。一見何気ない物語のようだけど、意味がわかると、その意外な展開に思わずゾワっと鳥肌が…。怖いだけではなく、感動や笑いなど、さまざまなタイプのショートストーリーを収録。読み進めるうちにどんどんはまっていく……「鳥肌」エピソードをお楽しみください。

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

【30日間無料】Amazonの読み放題をチェック >


意味がわかると鳥肌が立つ話
『意味がわかると鳥肌が立つ話』(蔵間サキ:編著、toai:絵/Gakken)

あかね空に照らされて

「ばいばーい、またねー」

 そう言って、友だちと別れる。帰る方向がちがうから仕方ないけど、やはりどこかもの悲しい。――早く帰ろう。お母さんたちが帰ってくるまで、1人で待つのは寂しいけれど。

 夕方と夜の境界のこの黄昏時が、私はあまり好きではなかった。

 足早に帰ると、アパートの前に誰かが立っているのが見えた。よく声をかけてくれるおじさんだ。

「こんばんはー」

 遠くからあいさつすると、私に気づいたおじさんが、あわてた様子で走ってきた。

「た、大変だよ!」

「え?」

 どういうことだろうと、私は首をかしげる。おじさんは、軽く息を切らしていた。そんな長い距離じゃないのに。

「今、キミが住んでいるあの部屋に、男が1人侵入しているみたいなんだ」

「ええっ!?」

「だから、今は、家に帰っちゃダメだよ!」

「わ、わかりました」

「もう警察には通報しておいたから! それまでおじさんと一緒にいれば安全だよ」

 私は、恐怖で動けなくなってしまった。遠くからサイレンの音が聞こえてくる。その音を聞きながら、私は願った。

 おまわりさん、もっと早く来て。急いで2人を逮捕して、と。

本作品をAmazon(電子)で読む >

本作品をebookjapanで読む >

あわせて読みたい