SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第25回「どうしたの」待ち

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更新日:2023/7/28

 よく見かける。「どうしたの」を待っている人を。

 話したいのなら、能動的になって欲しい。なんで求められる側の姿勢でいるのだ。「ねエ、聞いてよ」って言ってくれれば気持ちよくこちらもそれに応じるのに、その姿勢でいられると、興味があったとしても訊く気が減退してしまうではないか。

 

 それは一体どういう人なのかと言えば、わかりやすく周囲に聞こえるようなため息を吐く人や、わざと不機嫌に大きな物音を立てたりする人のことを指す。

 普通ため息は無声音で、声帯を震わせることなく発することができるものなのにも拘らず、もう若干声帯震わせちゃってんじゃんレベルで「はア」と発してみたり、それにそんな質量があるわけねエのによくもまアそんな音出せたねってくらいの音を立てて物を置いてみたり。大体においてそういう人に目をやると、伏し目がちに視線を落とし、なるべく頑張って悲壮感を滲ませようとした表情ですっかり成り切ろうと努めている。この佇まいからただならぬことが起きていることを誰かに察してもらおうとしているその感じは、なかなかに見るに堪えない。できるだけ多くの心配を獲得したその上で、求められる側として自分の感情を吐露する場を作り上げようとする。自分が吐き出したい気持ちを、こちらマターで引っ張り出してあげることに、一体どういったメリットがあるのですか、と後日話し合いの場を設ける必要すら感じてしまう。

 ただ、そういう人間は十中八九意識的にやっているので、その視野の中に誰かがいることは間違いない。視野に入っている「その人」を意識しての行動であるが故、放置した場合相手をしてもらえなかったという謂れのない恨みを買うことにもなりかねない。だから「その人」に私が含まれている場合、極力優しい顔をして言ってあげるのだ。

「どうしたの」

 と。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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