『こぶとりじいさん』あらすじ解説。おじいさんが陽キャな天狗のパーティーに乱入したら!?

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/16

 日本の昔話のひとつとして、有名な『こぶとりじいさん』。おじいさんがこぶを取られる話、という筋書きまでは思い出せても、どうしてそうなったのかは覚えていない方もいるのではないでしょうか。本稿では『こぶとりじいさん』のあらすじ・作品概要をわかりやすく紹介します。

こぶとりじいさん

『こぶとりじいさん』の作品解説

 本作は日本に伝わる民話のひとつで、鎌倉時代前期の『宇治拾遺物語』には既に『鬼にこぶとらるゝ事』と題して同様の説話が収録されていました。短いお話ですが、人を羨むことを戒めるとともに、鬼や天狗といった、山に潜む得体の知れない存在に対する畏敬なども伝わってきます。

『こぶとりじいさん』の主な登場人物

おじいさん:頬に大きなこぶのある老人。遭遇した天狗の怖さを忘れるほど、歌と踊りが好き。

天狗たち:山伏がモデルとされる山の怪異。その姿や人数、歌の内容には数々の異説があるほか、『宇治拾遺物語』などでは大勢の鬼とされている。

よくばりじいさん:おじいさんと反対の頬にこぶを持つお隣さん。地域によっては、踊りが上手であったり、こぶが無かったり、別によくばりではなかったりといったバリエーションがある。

『こぶとりじいさん』のあらすじ​​

 山へ薪を取りに入り、大雨に降られたおじいさんは、大きな木のウロで雨宿りをすることにしました。いつの間にか寝てしまったおじいさんでしたが、目を覚ますとびっくり仰天。外では天狗が歌えや踊れの酒盛りをしていたのです。

 最初は怖がっていたものの、楽しげな雰囲気についつい天狗の輪に加わったおじいさん。天狗たちは突然の闖入者に呆気にとられるも、おじいさんの歌と踊りに感心し、一緒になって騒ぎました。明日もぜひ来てくれとの依頼を受け、おじいさんは快諾しますが、天狗は念のためとおじいさんのこぶをスポンと取り、預かってしまいます。

 夜が明けると天狗はおらず、あれは夢だったのかなと思うおじいさん。しかし邪魔だったこぶは確かに消えており、たいそう喜びました。帰宅したおじいさんに、隣のよくばりじいさんが「こぶはどうした」と声をかけます。おじいさんが事情を話すと、今度は自分がこぶをとってもらおうと、隣人は山へ出かけていきました。

 さて、おじいさんを真似て夜まで木のウロで眠り込むよくばりじいさんのもとに、はたして聞いたとおり天狗たちがやってきて酒盛りを始めます。しかし、よくばりじいさんは天狗が怖くなり、飛び出していっても歌も歌えず、踊りもできません。

 震えるばかりの老人が、楽しみにしていた人間とは別人だと気付いた天狗たちは「土産にもうひとつこぶをやるからさっさと帰れ」と言い放ち、あいている頬にこぶをペタリと貼り付けます。哀れ、よくばりじいさんは重たいこぶを2つに増やして、泣く泣く帰る羽目になるのでした。

『こぶとりじいさん』の教訓・感想​​

 天狗は神さまとして祀られることもある霊的な存在ですが、主人公のおじいさんは恐れず、天狗たちと打ち解けます。しかし、邪な心を持ったよくばりじいさんは、隣のおじいさんを羨んで同じように行動しようとしますが、霊的な存在である天狗たちを前に怖気づいてしまったことから素性を見抜かれてしまいます。他者を羨んではいけないというメッセージが読み取れますね。

<第29回に続く>

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