『因幡の白兎』あらすじ紹介。神様たちの婚活サバイバル!? 姫が結婚相手に求める条件とは…

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/17

因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)』というお話を知っている方も多いことと思います。元々は、日本の神話が書かれている『古事記』という書物から抜粋されて作られたお話です。

 本稿では『因幡の白兎』についての登場人物やあらすじをご紹介します。

因幡の白兎

『因幡の白兎』の作品解説

『因幡の白兎』は、日本神話が書かれている『古事記』のなかに出てくる物語です。日本神話の神さまであるオオクニヌシ(大国主神)が国作りをすることにまつわるお話の一部で、教訓的なストーリーから後年は因幡の白兎のお話だけが抜粋されて、広く読まれるようになりました。

『因幡の白兎』の主な登場人物

オオクニヌシ:日本神話の神。出雲国(いずものくに)に住む。心優しい性格。

うさぎ:白い毛のうさぎ。皮を剥がされて泣いているところをオオクニヌシに助けられた。

兄さんたち:オオクニヌシの兄の神々。オオクニヌシと違って意地悪な性格。

ヤガミヒメ:因幡国(いなばのくに)に住む姫。

『因幡の白兎』のあらすじ​​

 昔、出雲国(いずものくに)というところにオオクニヌシという心優しい神さまが住んでいました。オオクニヌシにはたくさんのお兄さんたちがいましたが、お兄さんたちは心優しいオオクニヌシとは違い、みんな揃って意地悪でした。

 そして、出雲国の隣にある因幡国(いなばのくに)には、ヤガミヒメという美しいお姫さまが住んでいました。オオクニヌシのお兄さんたちは、ヤガミヒメに結婚を申し込むために因幡国に出かけることに。お兄さんたちは、荷物を全部オオクニヌシに持たせて先に行ってしまいました。

 お兄さんたちの荷物を背負って、オオクニヌシが因幡国の浜辺までやってきたときのことです。浜辺で一匹のうさぎが「痛いよう、痛いよう」と泣いていました。うさぎは毛皮を剥がされて赤裸になっていました。

「なぜ泣いているの。話してごらん」オオクニヌシがそう言うと、うさぎはこれまでのことを話し始めます。隠岐国に住んでいたうさぎは広々とした因幡国に憧れ、行ってみたいと思っていたこと。泳げないため、海のサメたちに「僕たちうさぎと、君たちサメと、どちらが数が多いか数えっこしよう」と言い、出てきたサメたちの数を数えるふりをしながら背中を飛んで因幡国へと渡ったこと。

 しかし、うさぎが背中を渡りきったときに、因幡国へ来たかっただけでサメたちを騙していたことをつい調子に乗って言ってしまったため、怒ったサメに毛皮を剥がされてしまっていたのでした。

 そうしてうさぎが泣いていると大勢の神さま(オオクニヌシのお兄さんたち)がやってきて、「海に入って体を洗い、山に登って風に吹かれなさい。そうすれば、よくなるだろう」と助言を与えます。しかし、そのとおりにしたら皮膚が裂けてしまって痛くてたまらないのだと、うさぎは言いました。

 オオクニヌシは「すぐに川に入って、体を洗いなさい。それから川岸のがまの穂を地面に敷いて、そのうえでころがってごらん」と教えます。言うとおりにすると、うさぎにはたちまち新しい毛が生えて、すっかり元の体に戻ったのでした。

 うさぎは喜んでオオクニヌシに礼を言うと、「ところであなたは、そんなに大きな袋をかついでどこに行くのですか」と聞きました。「因幡国のヤガミヒメに兄さんたちが結婚の申し込みに行くんだよ。私は、お供をして荷物を運んでいるんだ」とオオクニヌシは答えました。

 するとうさぎは「ヤガミヒメはお兄さんたちとは結婚しないでしょう。ヤガミヒメは心の優しいあなたを選びますよ」と言って去っていきました。

 その頃、お兄さんたちは結婚を申し込んでいましたが、ヤガミヒメは「このなかのどなたとも結婚はいたしません」と言いました。やがてオオクニヌシが荷物の入った袋をかついでやってくると、ヤガミヒメは一目惚れをして、「私はあの方と結婚いたします」と言いました。こうしてオオクニヌシはヤガミヒメと結婚をし、出雲国を治める最初の王さまになりました。

『因幡の白兎』の教訓・感想​​

 オオクニヌシのお兄さんたちのように意地悪なことを普段からする人に、いいことは起こらないという教訓はあらすじからも分かると思いますが、もうひとつの教訓として、うさぎのように調子に乗って誰かを騙すことによって、痛い目を見るということも含まれています。

<第30回に続く>

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