『ききみみずきん』あらすじ紹介。もしも、カラスの会話を理解できたら? 動物や植物の声が教えてくれたこと

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/14

 ペットを飼っている人は、動物が何を話し、どんなことを考えているかを知りたいと思ったことがあるのではないでしょうか? 本作『ききみみずきん』は動物や植物の声が聞こえるようになったおじいさんのお話です。

 わかりやすくあらすじを紹介するので、短い内容ながら教訓のあるストーリーを最後まで楽しんでください。

ききみみずきん

『ききみみずきん』の作品解説

 助けた動物に恩返しをされる……よくある昔話のストーリーですが、こういったお話を「動物報恩譚」といいます。『鶴の恩返し』などがその代表といえるでしょう。本作には細部が異なるさまざまなバリエーションがあり、中には主人公が若者で鯛を助けて殿様になるというお話もあります。

 また、『ききみみずきん』は日本各地で語り継がれてきたお話のため、明確な原典は不明とされています。

『ききみみずきん』の主な登場人物

おじいさん:ききみみ頭巾を貰う、心優しいおじいさん。

狐の親子:親切にしてくれたお礼にと、おじいさんに頭巾をあげる。

村の長者:娘の病に悩んでいる。

『ききみみずきん』のあらすじ​​

 むかしむかし、あるところに心優しいひとりのおじいさんが住んでいました。ある日、おじいさんは柴刈りからの帰り道、子狐が木の実を取ろうと悪戦苦闘しているところに出くわします。見かねたおじいさんは、代わりに木の実を取ってあげると、子狐は大喜びで帰っていきました。

 あくる日、町まで出かけて帰りが遅くなったおじいさんが家路を急いでいると、帰路の途中で昨日の子狐が手招きをしています。子狐に招かれるまま付いていくと、そこは子狐が母狐と暮らす家でした。そしておじいさんは母狐から、木の実を取ってくれたお礼にと小汚い頭巾をもらいました。

 そして次の日、おじいさんが薪割りをしていると、懐から昨日もらった頭巾がこぼれ落ちました。特に寒いわけでもありませんでしたが、おじいさんは試しにかぶってみました。すると、普段はチュンチュンとしか聞こえないスズメの鳴き声が、人間の言葉に聞こえるではありませんか。当初は頭巾の持つ不思議な力に驚きましたが、やがておじいさんはさまざまな動物の声を聞くことが楽しみになりました。

 そして今日も動物たちの会話を楽しんでいると、カラスの噂話が耳に飛び込んできました。曰く、村の長者の娘の病の原因が、楠(くすのき)の祟りによるものだというのです。そこでおじいさんは長者の家を訪ね、蔵の中で夜を過ごし、楠が話しているのを聞きました。

 どうやら新しく建てた倉が楠の腰の上に建っていることが祟りの原因だと気づいたおじいさん。鎮めるには、蔵をどうにかするしかないと長者に進言し、蔵をどかしてみたところ、たちまち娘は元気になりました。娘の回復に喜んだ長者は、おじいさんにたくさんのお礼の品をあげました。そして、おじいさんは狐の好物である油揚げをたくさん買って帰るのでした。

『ききみみずきん』の教訓・感想​​

 狐は昔、人間に化けて人を騙すことがあると言われていた動物ですが、そのような動物に対しても優しい行動を取ったおじいさん。分け隔てなく優しく接することの大切さを教えてくれるような物語です。

<第27回に続く>

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