『力太郎』あらすじ紹介。昔話史上稀に見る怠け者から生まれた!? 垢から生まれた男の子の英雄伝。その悲しい結末とは…

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/13

力太郎』の主人公は、垢から生まれた、その名も垢太郎(あかたろう)。この作品は『あかたろう』『こんび太郎』という名でも知られています。昔話のモチーフとしては少し不潔感が漂うように思う方もいるかもしれません。しかし、このあかたろうは、彼が鬼退治をする英雄譚でもあるのです。

 垢から作られたあかたろうがどのような人物で、どのような最期を迎えるか気になる方もいるのではないでしょうか? そこで本稿では『力太郎』のストーリーを結末までご紹介します。

力太郎

『力太郎』の作品解説

 力太郎の名で呼ばれることもある、岩手県をはじめとした東北地方に伝わる昔話です。この物語の主人公の名は、垢から生まれた「垢太郎(あかたろう)」や「こんび太郎」、おばあさんのすねから生まれた「脛こたんぱこ」、かまどから生まれた「火太郎」など、様々な形で伝承されています。

『力太郎』の主な登場人物

おじいさん・おばあさん:非常にめんどうくさがりな老夫婦。

あかたろう:おじいさんとおばあさんの垢から生まれた人間。怪力の持ち主。

『力太郎』のあらすじ​​

 むかしむかし、家でじっとしているだけで何もしない怠惰を極めたような、めんどうくさがりの老夫婦がいました。ある日、お風呂に入るのでさえ面倒なふたりが身体をこすってみると、面白いように身体からあか(垢)がポロポロと落ちてきます。いたずら心を起こしたおじいさんは、そのあかを丸めて小さな人形の形にし、神棚にまつりました。

 そして、手を叩くと人形に魂が宿り、ふたりの前に下りてきました。「あかたろう」と名付けられたその人形はお腹がすいたというので、ふたりは村人の助けを借り、せっせと料理を作りあかたろうに食べさせました。あかたろうは、食べれば食べるほどみるみると身体が大きくなっていきます。

 あかたろうの成長は止まらず、やがて鬼退治に行くので大きな金棒が欲しいと言い出しました。こうして、鍛冶屋さんによる金棒を手に、おばあさんが作ってくれた赤いちゃんちゃんこを羽織ったあかたろうは村を出ていきました。いつ空腹のあかたろうが帰ってきても大丈夫なようにと、毎日神様に祈り、畑を耕し作物を売り、一生懸命に働くおじいさんとおばあさん。そこには、かつての怠惰さは見る影もありません。

 そして3年後、さらに大きくなったあかたろうが帰ってきました。村を出たあかたろうは、金棒で多くの鬼を退治し人助けをしてきたと言います。立派になって帰ってきたあかたろうにおじいさんとおばあさんは大喜び。村人を集め盛大なお祝いをしました。

 やがて夜が更け、村人たちが帰ったあと、おじいさんはあかたろうの旅の疲れを癒そうと一緒にお風呂に入ります。ところが、おじいさんがあかたろうの背中を洗い、お湯をかけたところ、あかたろうはみるみると身体が小さくなり、やがてはお湯に溶けて消えてしまいました。悲しみに暮れるおじいさんとおばあさんでしたが、あかたろうは戻ってきません。しかし、怠け者だったふたりは、あかたろうのおかげで一生懸命働くようになり、また、あかたろうが持ち帰った金銀財宝もあり、末永く幸せに暮らしました。

『力太郎』の教訓・感想​​

 自分たちの垢で人形を作ったおじいさんとおばあさん。普段なら捨ててしまうようなものも無駄にしないことで、幸福が舞い込んでくるのかもしれません。また、怠け者だったふたりを変えた「あかたろう」ですが、子どもの存在が原動力になるのは、今も昔も変わらないのですね。

<第26回に続く>

あわせて読みたい