【第2回】取り扱い点数が少なくても魅力的な電子書店とは? ――BOOK☆WALKERの中の人に聞いてみた!

更新日:2013/8/14

ソーシャルメディアを通じて読者とコミュニケーション

――さまざまなキャンペーンや特典に工夫を凝らしているのはよくわかりました。しかし、そうなると「すでに購入済みの本に特典が付いている・早く買って損をした」といった声も上がりそうです。

担当S: わたしの方で担当している、Twitter・Facebookへの反応や、お問い合わせフォームにそういった声の多くは寄せられます。いただいた意見は間野のような担当にフィードバックして、例えば次回のキャンペーンではそれ以前に購入した方も対象に含める、といった具合に改善を図っています。まだまだ電子書籍は始まったばかりだし、我々の取り組みも道半ばだなと感じることもあって、いまだに「注文したのに紙の本が届かない」という問い合わせもいただくこともありますね。

――たしかに購入ページに「紙の本じゃないですよ」という注意書きがあるのが印象的です。そしてTwitterを拝見していると、そういった声に直接答えていますよね。先ほどの価格の話題も、積極的に返信されているのを見て「へー!」と思いました。

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担当S: 橋場から「プロアクティブ・サポート」たれ、と指示されていますので(笑)。率先して前に出て対応することを心がけています。あとはユーザーさんの方が我々よりも早く不具合に気がついたり、サービスの改善提案をしていただけたりします。そういった声には応えて行きたいですね。

担当S
株式会社ブックウォーカー サービス企画部
スマートフォン向けゲーム会社勤務を経て、ブックウォーカー入社。お問い合わせのほか、Twitterやfacebookなど、直接お客様とやりとりをする部分を担当。
Twitterでお約束ネタなどに対して的確な答えができないこともしばしばあるが、ググったり本に詳しいフォロワーさんに聞いたりして、なんとか体裁を保っている(つもり)。本好きな人はもちろん、ちょっとでも本に興味をもった人が立ち寄れるような場を作ることが目標。

橋場: ヘビークレームに対するトラブルシューティングをしっかり行うことで、逆にファンになっていただけるはず、という思いもあります。昨年6月までは実はサポートは外部に委託していたのですが、担当Sが入社したタイミングからこの体制に切り替えました。発展途上の電子書籍の世界では「ユーザー・ファースト」の視点が大切だと気づかされたからです。いま利用者を伸ばしている電子書店は、実はこのサポート体制の充実度が高いのではないかと見ています。

――なるほど。中規模のBOOK☆WALKERではその充実も図りやすいといえるかも知れませんね。

 ところで、6月からというお話しでしたが、たしかにそのくらいの時期から私も「なんだかBOOK☆WALKERがヘンで面白いぞ」と意識し始めましたね。

担当S: 僕のツィートは基本誤字脱字が多くて、フォロワーの方から「本を扱っているのに」としょっちゅう指摘されています(笑)。さっきのツィートも「値付け」が「根付け」になってますね……ワザとじゃなくて、アレ素なんです。反省してます。

――(笑)

担当S: まじめな話をすると、ここにやってきて他の出版社の方々とTwitterなどを通じて交流しているうちに、「紙でも電子でもどちらでもいいので、まずは本を読んで欲しい」という思いを強く感じたんですね。出版社の公式アカウントの間では「\版元皆兄弟/」という言葉がよく登場するんですが、僕もこの言葉を気に入っています。

 「皆兄弟」の精神で、さまざまな出版社の公式アカウントと交流したり、さらにはその出版社の本を読んでいただいている読者の方々とも積極的にやり取りさせていただいています。Twitterが、本が好きな人がコミュニケーションを取れる空間になれば、そしてBOOK☆WALKERのアカウントがその一助となれば良いなと思っています。ナチュラル誤植もその一助となれば(笑)。

橋場: 文字を司る仕事なんだけどね(笑)。

担当S: すみません。でも、この仕事をしていると、例えば間野が企画したカバー画集について「あれすごくいいね」という声もユーザーさんからいただけることもあります。クレームや改善要望だけではなく、そういったお褒めの言葉を担当に届けて、中の人のモチベーションを上げていくということにも努めていきたいと思っています。気軽に声をかけていただければと。

今後BOOK☆WALKERは電子書店はどこに向かうのか?

――BOOK☆WALKERの今後について聞かせてください。これからも規模やジャンルを絞った形で発展していくのでしょうか?

橋場: 実は先ほどもそれについて会議していたのですが、現在のようにDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)による縛りのある状態が長く続くことはないだろうと考えています。販売するデータが汎用性を持ったときに、ではここ1年注力して上手く回るようになったライトノベル中心で行くか、という訳にはいかない。やはりラインナップは他と同じ規模感が必要だということになるのではないでしょうか。グループ外の出版社様の協力も得ながら、それでいて今のお客様に「普通の本屋さんになっちゃったね」と言われないよう注意しながら、ラインナップの充実を図っていきたいと思います。

 ラノベはいま好調なジャンルなので、電子書籍についても出版社の協力を得ながらここまで成長できたという面がありますが、文芸など他のジャンルでも同じ方法論が通用するかと言えばそうではない。経済合理性が薄いなかでは、出版社、そして著者さんも積極的にこちらを向いてくれない場面は十分にあります。

――ラノベだとイラストの存在感も大きく、そこをコントロールする編集者、そして出版社の意向というのも大きかったわけですからね。他のジャンルではそういうわけにはいかない。

橋場: そうですね。ただ実はBOOK☆WALKERでは文芸も売れている、読んでいただいているんです。現状は角川書店のタイトルが中心なので、拡げていきたいと思います。

――角川グループはドワンゴの電子書籍サービス「ニコニコ静画」との提携も強めていますね。BOOK☆WALKERではどのような取り組みを行いますか?

橋場: わたしは「読書環境」「蔵書管理」「販売」という3つの観点で物事を考えるようにしていますが、それぞれの面で「ソーシャル活用」は重要です。単なるレビューの共有というレベルに留まらず、読者と著者をつなぐ場を出版社グループならではの強みを活かしながら作っていきたいと考えています。

 間野のようなジャンル担当、担当Sのようなサポート担当といった人間らしいサービスを支える部分を充実させつつ、彼らだけでは目が行き届かない部分の「気づき・出会い」を機械的・システム的に作る――アマゾンさんがやっておられるリコメンドのようなものも含めて――ということをやっていきますのでよろしくお願いします。

 

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