WEB官能&BL(13)浅見茉莉『言って、イって』

更新日:2013/8/6

「書けねえだろ」

「教えてください」

「なんで俺が。編集ってのは、そういう仕事じゃねえんだよ」

「中溝さんが頼りなんです! これがだめだったら、俺もうっ……」

 恭司の現状については、はるかからも本人からも聞いていた。

 中学時代から作家を目指し、初投稿で緑影新人賞を取ったものの、作家業に大反対の両親と決裂し、学費や仕送りを打ち切られてしまったのだという。

 加えてプレッシャーで二作目が書けず、リハビリにとチャレンジした官能小説までダメ出しされた。

 受賞の賞金やら印税やらも、学費を払って日々生活していればすぐに底をつくだろうし、作家としての未来も危うい。

 まさに後がない状態だ。だからこそ、自分から書かないとは言わないだろうと、踏んでもいたのだが――。

 なんだか微妙に目論見が外れてきている。中溝が期待していたのは、恭司がダメ出しに挫けず書き続けることで、頼られることではなかった。

 うわー、めんどくさい。やだ、こんなの。だいたい教えるって、どうしろってんだよ? 横に張りついて、一言一句チェックしながら書かせるのか? 冗談じゃねえ。

 と思うものの、必死にすがってくる恭司が憐れというか、放っておけないというか――なんだか可愛らしいというか。

 最後のポイントに「ん……?」と首を捻り、慌てて打ち消そうとする。

 いや、それはない。ないはずだ。自分はヘテロで、同性と関係を持ったことがないのはもちろんのこと、性的な意味で惹かれたこともない。

 かといってゲイを毛嫌いはしていないし、仕事でもごくまれに同性愛ネタが持ち込まれる関係上、一般人より知識があったり、そういったプレイ動画も見た経験があったりするが。

 ――そうだ。

 ふと思いついて、中溝は自分の上にいる恭司の腰に手を伸ばした。小振りな尻を、デニム越しに撫でさする。

 お、これはこれでなかなか。

「……な、中溝さん……?」

 恭司の目が怪訝そうに、自分の背後と中溝の顔を行き来する。童貞のせいか、触られていると思い当たらないらしい。

 なんだ、この反応。なんか楽しい。

 S気味なのは自覚している。このまま恭司を翻弄してやったら、どんな顔をするのか――やはり恥じらうのだろうか。それとも、ふざけるなと我に返るのか。

 しかしそうなっても中溝には、「教えてほしいんだろ?」というセリフがある。

 そうだよ。こっちだって面倒かけられてんだから、このくらいの楽しみはアリだろ。

「あ……あのっ……」

 さすがにおかしいと気づいたのか、恭司が困惑したように身を起こそうとした。その腕を引っ張って、抱き寄せる。柔らかみのない身体が密着するのが新鮮で、ちょっとだけ興奮した。

「教えてやるよ。実地教習だけどな」

「は……? あっ、ひ……!?」

 太腿で股間を押すと、恭司は素っ頓狂な声を上げた。

「な、なに――」

「だーかーら、おまえの身体を使って教えてやるっつってんの。知りたいんだろ? どんな音がするか」

 

 

登録不要! 完全無料!

WEB小説マガジン『fleur(フルール)』とは……

日々を前向きに一生懸命生きている、自立した大人の女性がとても多くなった現代。そんな女性たちの明日への活力となる良質な官能を、魅力的なキャラクターと物語で届けたい――そんなコンセプトで2月22日に創刊された『fleur(フルール)』。男女の濃密な恋愛を描いた「ルージュライン」と男同士の恋愛(BL)を描いた「ブルーライン」のふたつのラインで配信される小説の他に、大人気読み物サイト『カフェオレ・ライター』主宰のマルコ氏による官能コラムや「キスシーン」をテーマにした作家のオリジナルイラストなどの連載も楽しめます。

 ルージュライン Rouge Line

『本能で恋、しませんか?』
――男女の濃密な恋愛が読みたい貴女へ。
ココロもカラダも癒され潤って、明日への活力が湧いてくる――。
ルージュラインは、日々を頑張る大人の女性に、恋とエロスのサプリメント小説をお届けします。

 ブルーライン Bleu Line

『秘密の恋に、震えろ。』
――痺れるような男同士の恋愛が読みたい貴女へ。
たとえ禁忌を侵しても、互いのすべてを求めずにはいられない。
至上の愛に心が震える――。ブルーラインは好奇心旺盛な大人の女性へ究極の恋愛小説を贈ります。