Kindle、Kobo…復活なるか!? 電子ペーパー端末のこれから

社会

2018/11/7

「電子ペーパー端末は死んでしまったのか?」――そう考えていた時期が私にもあった。実際、ダ・ヴィンチニュースへの寄稿でも、端末価格の高さから「汎用タブレットには勝てない」という趣旨の記事を書いたことがある。Kindleをはじめとした電子ペーパー搭載の読書専用端末は、電子書籍時代の象徴としてメディアでも華々しく取り上げられていたが、最近ではすっかり存在感を小さくしていた。

 読書専用端末の人気が高まらない中、電子ペーパーの需要が下がり、歩留まり(大量生産によるコストの圧縮効果)が悪くなり、その結果、製品単価が上昇。汎用的に使えるタブレット端末との価格差がほとんどなくなり、ますます消費者から人気がなくなって行くという悪循環に陥っていたのだ。

 ところが、2018年後半~終盤にさしかかって新機種の登場が相次いでいる。

 まずアマゾンのKindleの第8世代モデルが11月7日に発売予定だ。電子ペーパーとフロントライトによる読みやすさはそのままに、画面とベゼルとの段差がなくなり、IPX8等級の防水機能を備え、32GBのメモリを搭載した「マンガモデル」もラインアップされる。それでいて重さは前のモデルより10%軽くなっており、価格も1万3980円(広告付き・8GBメモリ・Wi-Fiモデル)からと汎用タブレット端末よりも一段低い価格帯に設定されている。

(Kindle販売ページより)

 10月24日には楽天の「Kobo」にも新機種が加わった。こちらは8インチの大画面を備えマンガの見開きページも快適に読めることがウリだ。32GBメモリを標準で備え、容量の大きなマンガも多数保存できる。価格は3万4344円で、7インチ画面を採用するライバルKindleの最上位モデルOasisで同様の仕様(32GB・広告なし・Wi-Fiモデル)を選択した際の3万4980円と拮抗する。

(Kobo Forma販売ページより)

 いずれも最上位モデルの価格帯は、やはりiPadのような汎用タブレットと同じ土俵になってくるが、いずれにしてもこのような攻めの姿勢の新機種が複数出てきたことは、電子書籍専用端末を愛好する者としては朗報だ。

「目が疲れにくい」「消費電力が低い」といった特色を持つ電子ペーパーを採用した読書専用端末は長い時間本を読むユーザーにとっては、唯一無二の存在だ。そんな電子ペーパーの特徴とそれを望む、「決して多数派ではないが熱心なユーザー」を狙った製品としてはやはり「全巻一冊」が挙げられるだろう。

 今年2月、クラウドファンディングサービスKickstarterでの『全巻一冊 北斗の拳』の資金調達を成功させたプログレス・テクノロジーズ社は、その後、作品が収録された「コンテンツカセット」を本体(税別:3万5000円)とは別に販売する戦略を採り、『NARUTO ナルト』『シティーハンター』『沈黙の艦隊/ジパング』といった作品にラインアップを拡げている。

(全巻一冊 販売ページより)

『沈黙の艦隊/ジパング』両シリーズ(全32巻+全43巻)を収録したコンテンツカセットは税別3万7500円と決して安価ではないが、見開き電子ペーパーでの「一気読み」は他では得られない読書体験を提供する。

 電子書籍ブームの頃は、「電子書籍を読むなら専用端末」というイメージが拡がり、それが逆に電子ペーパーの「モノクロ表示しかできない」「表示のリフレッシュに時間が掛かる」といったある種の「欠点」がクローズアップされ、失望につながってしまっていた感がある。そのブームが一段落した今、電子ペーパーの利点を活かした製品が、その利点を評価できるユーザー向けに価格・機能の最適な落としどころを探って改めて登場してきていると言えるのではないだろうか。

 冒頭に挙げた電子ペーパーの歩留まり、という点でも良い兆候がみられる。電子書籍端末ではないが、ドコモが10月に発表した「カードケータイ」がそれだ。電子ペーパーを採用した世界最薄最軽量ケータイとして注目を集めている。

(カードケータイ KY-01L 製品ページより)

 重さは47グラム、連続待ち受け時間は約100時間、連続通話時間は約110分と省電力。電子ペーパーゆえに動画再生には非対応など制約もあるが、読書専用端末同様、制約以上のメリットを評価できるユーザーに特化した「割り切った」仕様になっている。大画面化、高スペック化競争が続くスマートフォンとは一線を画した製品とも言える。

 電子ペーパーの活用がこのように読書端末以外にも拡がれば、当然電子ペーパー自体の歩留まりは改善する。低需要、高価格化という悪循環を断ち切って電子ペーパーの特色を活かした製品がさらに登場することに期待したい。

文=まつもとあつし