川端康成『古都』あらすじ紹介。生き別れ、身分違いとなった双子の姉妹

文芸・カルチャー

更新日:2023/6/16

『古都 (新潮文庫) 』(川端康成/新潮社)
『古都 (新潮文庫) 』(川端康成/新潮社)

 物語の主人公は、京都の由緒正しい呉服屋の美しい一人娘である佐田千重子。両親に愛されながら育った彼女だが、彼女は実の子ではなかった。そして自分が捨て子なのではないかと悩んでいた。秀男という青年が彼女に思いを寄せていた。

 5月、千重子は自分とそっくりな娘を見かける。それからしばらく経った7月の祇園祭の夜、彼女は八坂神社でその娘を再度見つけた。苗子というその娘は千重子のことを見つめ、「あんたは姉さんや」と言う。

 彼女らは互いの身の上を話した。ふたりは双生児で、姉の千重子だけが生まれて間もなく呉服屋の前に捨てられたのだ。しかし互いに20歳となった今、苗子は杉林で労働する娘であるのに対し、千重子は呉服屋の教養ある娘。身分の違いを感じた苗子は、千重子のことをお嬢さんと呼んだ。

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 千重子に好意を寄せる秀男は千重子と間違えて苗子に声をかけ、自身が考えた柄の着物の帯を織りたいと申し出る。秀男は次第に苗子に惚れていく。その頃、千重子の方では幼馴染の真一という青年との縁談が進んでいた。

 千重子に手が届かず瓜二つの妹に惚れた秀男は、苗子に結婚を申し込む。千重子はこの結婚に賛成したが、秀男が愛しているのは自分ではなく姉の面影だということを知っている苗子は申し出を断ろうとしていた。

 千重子の両親は苗子のことを引き取ってもいいと言い、冬の夜、苗子は千重子の家に一泊することになる。そこでふたりは初めて姉妹としての幸せなひとときを過ごした。千重子は一緒にいたいと言ったが、姉と佐田家の幸せな暮らしに迷惑をかけたくないと考えた苗子は村へと帰って行った。

文=K(稲)