SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第6回「隠れヘテロドックス」

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公開日:2021/12/27

 私の少し曲がった性格の発端は、人がああだからこうしよう、人がこうだからああしよう、といじわるばあさんよろしく、普通と呼ばれる類のつまらないものなんかではなくて天邪鬼な生き方をしたほうが格好がつくのではないかと本気で思っていた時期があったからである。

 人と違う自分、即ち格好良い、だった。

 多分それはコンプレックスから生まれたものだ。人より秀でたものが少ないことに気が付いてしまった少年期から青年期あたりで、やり場のなくなってしまった自我から発生したものだと思う。オーソドックスにそのやり場がないなら自分で作ってしまえ、といった具合なのだと思う。

 しかしながら二十歳を過ぎてからようやく、それは果たしていかがなものだろうかという疑念を抱き始める。「やり場がないなら作ってしまえ」は創造的なようでいて少し違うのではないか、と思い始めたのだ。オーソドックスの中で試行錯誤を幾度も繰り返したその先で「やり場がないなら作ってしまえ」はきっと創造的である。しかし、ろくすっぽオーソドックスと向き合うこともせず早々に見切りをつけての「やり場がないなら作ってしまえ」は、ただ真っ当な勝負を避けただけという気がしてきたのだ。そして今まで出会った普通を極端に嫌う人や、「私は私」をジャブのように常用する人が創造的であった試しがないことに思い当たる。

 よって私は、二十五歳を過ぎたあたりでオーソドックスを一度全て受け入れることに決めた。その後で、どうにもやり場がないはみ出た部分を、仕立てに凝ったジャケットの裏地のようにひっそりと慎ましく愛するようになった。

 要するに天才肌であろうとすることに、そして天才肌であるかもしれない可能性に見切りをつけたのだ。これは諦念とは全然違う。言うなれば、立場の理解。理解した上で「普通の人間が天才と呼ばれる人間を下から捲る」というバリバリの野心を持ったリアリストに、この辺りからなりました、という話だ。

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渋谷龍太●1987年5月27日生まれ。ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2005年にバンド結成、2009年メジャーデビュー。2011年レーベルを離れ、インディーズで活動を開始し、年間100本のライブ活動をスタート。大型フェスにも参加し、2018年には日本武道館単独公演を開催。2019年に兵庫・ワールド記念ホールと2020年1月には東京・国立代々木競技場第一体育館で初のアリーナ単独公演を開催。チケットを即日ソールドアウトさせる。結成15周年を迎えた2020年4月にメジャー再契約。2021年、「愛しい人」がドラマ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)の主題歌に、「名前を呼ぶよ」が映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用された。また、自身最大キャパとなるアリーナツアー「SUPER BEAVER都会のラクダSP〜愛の大砲、二夜連続〜」を日本ガイシホール、大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナで開催。2022年2月23日(水)にフルアルバム『東京』をリリース。3月26日(土)から全国20カ所を回るホールツアー「SUPER BEAVER『東京』Release Tour2022~東京ラクダストーリー~」をスタートさせる。
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