読みたい本がここにある

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

作家
梶井基次郎
出版社
岩波書店
発売日
1954-04-25
ISBN
9784003108710
amazonで購入する

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1)) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

夜間飛行

長いこと『檸檬』は手に負えない作品だった。今回、「得体の知れない不吉な塊」は主人公にしかわからぬ事と割り切って読む。隣人の話を聞くように、わからぬ所はわからぬと、語り手の感覚に身を委ねて読んでみた。私の好きな場面は、夜の果物屋の店頭がひときわ明るく浮びあがり、電燈の光がきりきりと眼に刺し込んでくる所。また、最後の方で丸善(西洋の象徴?)を吹き飛ばす空想をする所も。そこまで書き連ねてきた感覚が一顆のレモンに集約されていき、言葉によって支えられてきた虚構が一気に炸裂するかのようだ。やっと檸檬の良さがわかった?

2015/07/21

kishikan

梶井基次郎を知ったのは、若かりし頃、受験勉強の文章解読の例文として「筧の話」が取り上げられていたからである。代表作「檸檬」ではなかったというのも何かの縁だが、とにかく文章が鮮烈であったということが記憶に残っている。梶井の文章は詩的という簡単な表現では済まされない程、事象や心情、風景などを極限までに研ぎ澄まされた言葉で表現している。文の隙間から、情感が滲みだしてくるのである。それを読み手である自分が感じ取ることこそ、梶井を読む楽しみであり、そんな数珠の作品に何十年ぶりの読書の醍醐味を味わった。

2016/03/06

とびほびこび

時が経つと共に色合いは薄れ褪せていくものなのに、言葉で塗られた檸檬は時と共により鮮明に彩られる。病に侵され暗澹たる気持ちを吹き飛ばした紡錘型のそれは、たかだか1個の個体でありながら極限まで研ぎ澄まされた凶器のようにも思え、それを表現した作品の秀逸さにはただただ脱帽するしかなかった。時間の都合から全篇読み切る事は出来なかったが、檸檬の衝動にかられたら再読してみようと思う

2015/03/08

さきん

檸檬は教科書に載っていて、その時の印象が忘れられない。他の作品も檸檬に違わず、情景描写がまるで手に取るように思い浮かぶことのできるたくみな文章には舌を巻く。病魔が死を絶えず意識させ、生きている一瞬一瞬を冷静に観察する機会を大切にしている点で正岡子規に似ている。他の作品の多くも、肺病の著者をモデルに描いた短編が多く、何か死への恐怖や諦め、焦燥が伺える。

2016/12/23

nobody

新興芸術派であり佐々木基一曰く「感受性の純粋抽出」を目指した作家だが私に言わせれば字義通りの意味での耽美派であり堀辰雄に近く2人ともよく歩く「彷徨者」(佐々木)である。「生活的の作品はとても書けない。やはり風景的だ。いつまでもこんなものを書いていては実際いけないのだが」との自覚に救いがある。『瀬山の話』の後半は実にいい。絶対的な孤独の自覚、あらゆる憤怒・悔恨・嫌悪を超越しての不感症(だから『檸檬』の「えたいの知れない不吉な塊」も実は超越している)、この方向で進んでほしかったが「風景的」で終わってしまった。

2018/04/12

感想・レビューをもっと見る