地獄の季節 (岩波文庫 赤 552-1)
地獄の季節 (岩波文庫 赤 552-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ヴェルレーヌに「非凡な心理的自伝」と評された『地獄の季節』。散文詩が主調をなしているが、「歌う」詩というよりは「絶叫」するかのようだ。もっとも、ランボーにあっての文学的営為は絶叫することに於いてしか表現のしようがなかったのだろうが。また、詩集全体の構成意識も(普通の意味では)きわめて希薄だ。いわば次から次へと魂の彷徨のままに言葉が衝きつけられていったかのようだ。こうしたあたりは、まさにシュールレアリスト達の「自動筆記」に先駆するものだろう。『飾画』は一転してものやわらかな散文詩だ。訳文は朔太郎を思わせる。
2013/06/19
新地学@児童書病発動中
うーん、これには困りました。鹿児島弁で言うばったないならん(どうしようもない)状態でした。詩は意味が分からなくても、伝わるものがあれば、どんどん読めるのですが、これは伝わってくるものが少なかったです。ところどころにはっとするような美しい表現があって、さすがだと思ったのですが、詩の中には入りこめませんでした。10代の天才詩人の胸の内を理解するには、年をとりすぎたのでしょう。
2016/05/05
青蓮
Twitterのフォロワーさんのお勧めで手に取りました。「心理的自伝」とヴェルレーヌが評した天才詩人の散文詩。普段あまり詩を読まないせいなのか、そもそも私にポエジーが無いからなのか(多分両方)正直、難解でした。書かれたその時代の背景を知っていたならもう少し内容も理解できたかも知れません。これを機に詩集も色々読んでみようかなと思いました。「過ぎ去った事だ。今、俺は美を前にして御辞儀の仕方を心得ている。」
2017/07/20
猫丸にゃん太
地獄の季節で主張している事は二点あり、一点目はブルジョアへの批判である。ブルジョアは道徳という社会的欺瞞の仮面を着けてプロレタリアを支配しているという。つまり、ランボオは彼の時代のフランスでは嘘つきが得をするという不条理に嘆ている。そして人民に訴える、エデンの様に正直な世界が本当の幸せな世界なんだよと。二点目は詩人という幻想世界との決別である。彼は幻想の世界に於いて現実からの逃避をしていたわけで、p60に於いて現実回帰を宣言する。さらに、幻想と言う嘘を捨てることで正直さを獲得したと主張する。
2015/03/24
絹恵
過ぎた救済によって、自身を奪われることを防ぐために声を張るのは、自身を失うことへの恐れを叫んでいることになります。夕闇に融ける彼がいれば、白昼夢に霞む彼もいるけれど、世界の思想に馴染めないのは、ここを地獄とする彼自身の意思ゆえです。それこそが求めた自己だけれど、季節外れの男のアビリティに世界は振り向くのだろうか?(PP2期8話/鹿矛囲)
2014/12/01
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