夏目漱石や志賀直哉もハマっていた!? 近代日本のアイドル史に迫る
『幻の近代アイドル史 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記』(笹山敬輔/彩流社))
明治、大正、昭和、平成と、時代は続きながらも移り変わっている。しかし、いつの時代にも人びとを熱くさせるものが存在する。その一つが、アイドルというカテゴリだ。今や幾多のユニットが乱立する時代となったが、じつは現在、盛り上がりをみせるアイドルというひとつの文化は、かつての日本で生まれた「大衆芸能」にまでさかのぼるという。
その視点から独自の考察を展開している1冊が、『幻の近代アイドル史 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記』(笹山敬輔/彩流社)である。文豪・夏目漱石や詩人・谷崎潤一郎など、いまだ語り継がれる文化人たちも、こぞってハマっていたというアイドルたち。時代ごとの大衆芸能から様々な見解の並ぶ同書だが、その中から、文化人たちがハマったという「娘義太夫」についてのエピソードを紹介していきたい。
娘義太夫とは、明治時代に栄えた大衆芸能のひとつである。浄瑠璃の一流派である「義太夫節」を歌う女性グループの総称だ。とはいえ、現代のように歌詞にメロディを付けるというものではなく、三味…