夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)
「夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)」のおすすめレビュー
愛する人が死ぬことで自分はサバイブできる――極限状態で育まれる、究極の純愛
『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(斜線堂有紀/KADOKAWA)
山に囲まれた集落で暮らす中学3年生の江都日向(えとひなた)。彼の前に、6歳年上の美貌の女性・都村弥子(つむらやこ)が現れる。身体が純金に変異する難病「金塊病」を患う弥子は、江都に奇妙な提案を申し出る。
「私を相続しないか?」
弥子の身体には死後、約3億円の値がつくという。
劣悪な家庭環境に置かれ、進学も将来の夢も諦めていた江都にとって、この申し出は吉と出るか凶と出るのか――。
『キネマ探偵カレイドミステリー』シリーズでデビューし、前作『私が大好きな小説家を殺すまで』で新境地を拓いた斜線堂有紀の最新作『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』。題名からしてなんとも不穏な雰囲気が漂っており、前作に引き続き、“愛”という感情に真正面から挑んでいる。
まるで札びらで頬を叩くような感じで貧しい少年に提示された、風変わりな遺産相続。ただし弥子は、自分を相続するための条件を一つだけ江都に出す。それは、チェッカーというゲームで彼女に勝つことだった。かくしてサナトリウムに入院している弥子のもとへ…
2019/7/25
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同企画は、課題図書8作品のレビューを募集し、予選・本選を経て各作品ごとにベストレビュアーを1名ずつ決定。さらにその中から“ベスト・オブ・ベストレビュアー”を選出するというもの。
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課題図書を読んだ人も、まだ読んでいないという人も、優秀レビュアーの素晴らしいレビューを読み「これは!」と思うレビューに投票してみましょう。投票期間は2019年11月24日(日)まで! ⇒「第4回 レビュアー大賞」特設ページ
【課題図書作品ラインナップ】 『東京會舘とわたし』上・下(辻村深月/文藝春秋) 『マチネの終わりに』(平野啓一郎/文…
2019/11/11
全文を読む最愛の人の死には3億円の価値があった――“愛の証明”をめぐるラブストーリー『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』
『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(斜線堂有紀/KADOKAWA)
新進気鋭の小説家・斜線堂有紀が手がけた『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(KADOKAWA)が、2019年7月25日(木)に発売された。“最愛の人の死”をめぐって描かれる夏の物語に、「ぐうの音も出ないほど完璧なラブストーリーでただ泣いてます」「好きな人に“あなたが好きだ”と信じてもらうことの難しさを考えさせられる」「この作品を夏に読めてよかった」と絶賛の声が相次いでいる。
本作の主人公・江都日向は、劣悪な家庭環境によって将来に希望を抱けずにいる少年。そんな彼の前に、体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患った女子大生・都村弥子が現れる。彼女は死後3億円で売れる“自分”の相続を江都に持ち掛けるのだが、2人の距離は徐々に縮まっていき―。
相手が死ねば莫大な金銭が手に入る、という特殊な状況のもとで繰り広げられる“愛”の物語。ウェブマガジン「カドブン」に掲載された書評では、『恋する寄生虫』などの代表作をもつ小説家・三秋縋が本作のテーマについて紐解いていた。
江都は弥子に純粋な…
2019/9/22
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夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『金塊病』という奇想天外、奇妙奇天烈、摩訶不思議な病を患う女性と偶然にも知り合ってしまった一人の中学生の姿が描かれていくこの作品。そこには『回想』という形で二人の日々を振り返る主人公の物語が描かれていました。読む気が萎えそうになる『金塊病』という設定に戸惑うこの作品。読み進めるうちにそんな戸惑いが雲散霧消するこの作品。“最愛の人の死に価値が付けられてしまった人間は、その価値にどう向き合えばいいのか”、この物語のテーマをそんな風に語る斜線堂有紀さん。そんな斜線堂さんの物語作りの上手さを感じさせる作品でした。
2024/02/02
おしゃべりメガネ
このテのジャンルで定番?となりつつある'不治の病'モノです。やはり個人的にはベタですが『キミスイ』や『君は月夜に〜』のインパクトからは脱却できない感が否めません。しかし、本作は本作としてまぁ色々と次から次へと新たなネタ(病気)を考えつくものだなぁと。後半でとある'仕掛け'が解明されるのですが、その描写に正直「へぇ〜」と薄いリアクションしかできなかった自分が残念です。いつも思いますが、やはりこういう作品は読む年齢層が限られてしまい、読んでいても純粋に入り込めなくなっている自分がとても悲しく感じてしまいます。
2019/09/25
夢追人009
「夏の終わりに君が死ねば完璧だったから」の題名はちっとも完璧でないけれど、でも感傷的でなく涙腺崩壊も誘わず適度にクールで謎めいていてバッチリ決まっていないのが人生に正解がない事と同義で良いと思いますね。不治の病・金塊病に冒されたチェッカーの達人の女子大生・弥子には同じく男言葉で喋る櫻子や桜良の遺伝子が共通していそうです。貧困家庭で暮らす中三生・江都は彼女とのチェッカー勝負に勝利し彼女が死と共に変貌する3億円の金塊を手にできるのか?彼女の思い遣りの心を受け止め濃密な時間の思い出を胸に真の幸せを掴んで欲しい。
2019/10/01
麦ちゃんの下僕
“特別な2人の関係”を描くのが巧すぎる斜線堂さん…この作品で描くのは、身体が硬化して金に変質してしまう難病「金塊病」に罹ってしまった大学生・都村弥子と、閉鎖的な村&困窮する家庭環境で進学も夢も諦めてしまった中学生・江都日向との“純愛”です。死後3億円の値が付く弥子の身体…チェッカーで弥子に勝てばその3億円を相続でき村を出て自由に生きられるエト…周囲からは「金目当て」にしか見えない2人の関係を“純愛”であると証明するにはどうすれば良いのか!?他の斜線堂作品を読んでいるからこそ“意表を突かれる”結末に涙です!
2022/01/30
nobby
死を迎えるにあたり身体が金に変わるという「金塊病」、その普遍と化した物質の価値は3億円。こんな奇病を患う余命短い女子大生と貧困劣悪な家庭に観念する少年の出逢いから始まる物語。序盤は何とも不思議で怪しい雰囲気ばかり漂うが、中盤で思った通りに変貌遂げたラブストーリーは所々で涙も誘う。同時に、大金の噂が呼び寄せる厄介事は生々しくも極めて下世話…そんな世間に向けて彼らが『正解』目指す展開にドキドキしながら、迎えるラストはせつなくも清々しい。彼女が遺したものの価値そして意味、その謎掛け模様は作者ともども深き味わい。
2019/10/22
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