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ケチる貴方

ケチる貴方

ケチる貴方

作家
石田夏穂
出版社
講談社
発売日
2023-01-26
ISBN
9784065303580
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「ケチる貴方」のおすすめレビュー

ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、石田夏穂『ケチる貴方』

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年4月号からの転載になります。

『ケチる貴方』

●あらすじ● 備蓄用タンクの工事会社に勤める主人公・佐藤の悩みは冷え性。末端を中心に、寒気を常時感じながら、新人の教育業務や職場で頼まれるちょっとした手伝いに面倒臭さや不機嫌さを隠せない。しかしある時、会社の送別会費用としてやむを得ず身銭を切ったところ、突如身体に温かさを感じるようになり……。(表題作) 第38回大阪女性文芸賞受賞の「その周囲、五十八センチ」も同時収録。

いしだ・かほ●1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」で第45回すばる文学賞佳作。同作は第166回芥川賞候補にも選出された。22年「ケチる貴方」が第44回野間文芸新人賞候補作となる。

石田夏穂講談社 1650円(税込) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

身近な友は真の友 未だ脳裏に浮かぶ『我が友、スミス』のラストシーン。会社員女性の目線から語られる、身体と仕事。その傍らにはスミスというトレーニング器具があった。本作もまた、“友”の存在が鍵を握る。極度の冷え性…

2023/3/6

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ケチる貴方 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

いっち

タイトルから、ケチな旦那の批判話かと思ったが、違った。ケチなのは主人公。主人公は、備蓄用タンクの設計と施工を請け負う会社に勤める7年目の女性で、新人の指導員を担当する。総合的にケチな主人公。ケチは身体機能にも関連する。「筋肉も脂肪も豊富でありながらいつも寒がっている在り方。食べても食べても熱に変換しない在り方」。主人公は寒がりだが、ケチでなくなったとき、体温が上昇する。体温上昇のために、関係のない仕事を手伝い、嫌な依頼を引き受け、出さなくてもいい金を出す。体温上昇の奴隷と化した主人公の、行く末だけが残念。

2023/02/18

ちゃちゃ

私たちの心は、程度の差こそあれ、いかに身体の影響を受けるか。皮肉をユーモアで包みながら、やや自虐的(戯画的)に描いた快作。二話の短編、『ケチる貴方』は極度の冷え性に悩まされる女性、『その周囲、五十八センチ』は痩身願望から脂肪吸引依存に取り憑かれた女性が、涙ぐましい努力を続ける日常がモノローグで語られる。特に後者は、肉体による支配や「見た目」で判断する世間の目から、私たちがいかに逃れられない存在であるかを、鋭く掬い上げて印象に残る。「人は内面だ」と平然と言い放つ世間。その無邪気さに風穴を空けた痛快な作品だ。

2023/11/29

NADIA

とんでもないレベルの冷え性に悩む女と、脂肪吸引を繰り返す女が主人公の2編の短編。ストーリー的な面白さよりも、文章力に圧倒された。すごく面白い!! この作家さん、追いかけて行こうと思う。

2023/11/14

itica

深刻なほどの冷え性を小さいときから抱えてきた女性の「ケチる貴方」と、どんなにダイエットに励んでも太腿だけ痩せない女性があるものに嵌った「その周囲、五十八センチ」の二編。どちらも女性にとっては他人事と思えない悩みに特化したような話。本人は至って真剣。でもどこか可笑しみがあって惹きつけられる内容だった。

2023/03/29

ネギっ子gen

【脚の問題というのは、即ち人生の問題である。これはこの世に存在する数少ない真実だ。脚が太いと、人生はものすごく難易度が上がる】表題作など2篇。前者は「冷え性」、後者は「脂肪吸引」を――。“身体”に着目したところを高く評価したい。「その周囲、五十八センチ」の、拒食症になった記述が刺さった。<かつてない身軽さに狂喜乱舞した。痩せ過ぎによる目の隈だけは悩みの種だったが、私は2か月ものあいだ雀の涙以下の食生活を貫いた自分を祝福したい気持ちで一杯だった。体重計から下りた私は、身体中に力が漲っていた>。わかります!⇒

2023/08/31

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