我が手の太陽
我が手の太陽 / 感想・レビュー
starbro
★第169回芥川賞候補作&受賞作、第三弾(3/5)です。 石田 夏穂、第166回の候補作「わが友スミス」に続いて、2作目です。現代に生きる溶接工の心理描写は興味深いですが、「わが友スミス」が好かっただけに、令和の作品としてはインパクトに欠けました。 続いて、芥川賞候補作「##NAME##」へ。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000380757
2023/07/26
hiace9000
石田諧謔を一切封印し、熟練溶接工伊東の目線で綴る仕事小説。全編に漂う専門・職人用語飛び交う現場の濃密な空気感と息苦しいまでの緊迫感。溶接アークの放つ2万度を超える太陽の熱、それを我が手で自在に操ることのできる万能感と優越感、だが想定外の相次ぐフェール(失敗)により瓦解し始める自信と自尊心、重なる焦りと迷いが生み出す息苦しさは、伊東の内面と一気にシンクロしていく。我が手の「太陽」、いわば溶接工ゆえ知り得た仕事への誇りと矜持を改めて思う。彼を哀れとは思えない。はたして自分に「太陽」と呼べるものはあるだろうか。
2023/11/06
いつでも母さん
私の知らない世界。溶接・溶断の話。突然のスランプに陥った腕利きの溶接工・伊東。そこから抜けられるのかードンドン追い詰められる伊東の心情は、誰しもが持っている自分とのせめぎ合いでもある。自負や矜持・・なけりゃ続けられない。だが、それが知らずと足枷になっていたりする。認めたくない時、人はどうする?どうなる?異色の職人小説とある。芥川賞候補作品・・苦手なのに最後まで読まされた。そして不安になる読後感。
2023/10/07
trazom
「職人小説」という講談社のPRにソソられた。溶接工を主人公として、職人のプライド、不安、スランプ、そして人としての不器用さが見事に写し出されている。私自身、溶接現場と関りも多く、プライドと高いモラルに支えられた職人さんの気持ちが手に取るようにわかる。スランプに陥った主人公の傲慢も:自分の仕事を馬鹿にされることへの反発、「自分では何もできないくせに」と工場長や検査員への心の中での軽蔑、年齢を重ねて自分の欠陥率が上昇する現実の居たたまれなさ。愛もお金も家族も人生も一切登場しない、ユニークで見事な職人小説だ。
2023/10/09
ちゃちゃ
溶接工である伊東を主人公に据えた、地味で、ある意味マニアックな小説だ。職歴20年の熟練工の日常は、私たちの共感を安易に誘わない。専門用語を多用した臨場感溢れる現場。ハンダゴテを持ち、高熱を帯びたハンダと向き合う伊東。スランプに陥り、今までの誇らしさや万能感は一瞬で消える。焦りや不安、自信喪失に襲われ、己れの弱さや傲慢さと対峙し自問自答する。職人としての矜恃や信念にこだわり続ける彼の姿は、孤高ですらある。彼の心の揺らぎに一点フォーカスした、作家としてのストイックな姿勢。本作の魅力はそこにあるのかもしれない。
2023/10/10
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- 出版社
- 光村図書出版
- 発売日
- 2023-06-26
- ISBN
- 9784813804383