ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、石田夏穂『ケチる貴方』
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年4月号からの転載になります。
『ケチる貴方』
●あらすじ● 備蓄用タンクの工事会社に勤める主人公・佐藤の悩みは冷え性。末端を中心に、寒気を常時感じながら、新人の教育業務や職場で頼まれるちょっとした手伝いに面倒臭さや不機嫌さを隠せない。しかしある時、会社の送別会費用としてやむを得ず身銭を切ったところ、突如身体に温かさを感じるようになり……。(表題作) 第38回大阪女性文芸賞受賞の「その周囲、五十八センチ」も同時収録。
いしだ・かほ●1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」で第45回すばる文学賞佳作。同作は第166回芥川賞候補にも選出された。22年「ケチる貴方」が第44回野間文芸新人賞候補作となる。
石田夏穂講談社 1650円(税込) 写真=首藤幹夫
編集部寸評
身近な友は真の友 未だ脳裏に浮かぶ『我が友、スミス』のラストシーン。会社員女性の目線から語られる、身体と仕事。その傍らにはスミスというトレーニング器具があった。本作もまた、“友”の存在が鍵を握る。極度の冷え性…