オール・ノット
「オール・ノット」のおすすめレビュー
一緒にいなくとも、ともに過ごした時間の意味は失われない…柚木麻子が新作に込めた「連帯しない」人間関係の価値
『オール・ノット』(柚木麻子/講談社)
柚木麻子さんの小説『オール・ノット』(講談社)を読んで、『ランチのアッコちゃん』(双葉社)を思い出す人も多いのではないだろうか。これはきっと、生きづらさを抱えた女性たちが手を取り合い、パワフルに道を切り開いていく姿を描いていく物語なのだろう、と。
主人公の真央は、実家の援助を受けられず、奨学金の返済を抱え、切り詰めた生活を送りながら生活費を稼ぐ大学生で、ある日、バイト先のスーパーで50代くらいのおばさんにあたたかいお茶を差し出される。いるだけで店全体の商品が動く、といわれる名物試食販売員の彼女、四葉はどんなときも品があって、話せば知識が豊富で、そして心を豊かにしてくれるおやつやごはんをつくることができる。それもそのはず。四葉は、横浜・元町で栄華を誇った一家の娘だったのだ。今はなんらかの理由で財を失ったらしいが、アパート住まいであっても、彼女はいつだって余裕のある雰囲気を醸し出していた。
四葉と親しくなり、自分自身を労ることを覚えていった真央は、ただ目の前の日々を生き抜くのではなく、将来どうなりたいかの夢を抱…
2023/4/20
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オール・ノット / 感想・レビュー
ヴェネツィア
実に鮮やかなエンディング。まさにプロフェッショナルのなせる業である。ここでは何も終わらない。真央はどうなったのだ。四葉は?ミャーコは?舞は?それはわからない。だけど、それでいいのである。それであってこそまさに小説なのだから。現代と過去と(近未来も)が交錯するが、小説世界に一貫して流れているのは横浜のノスタルジーであり、そこにいた女性たちの過去と現在を含むノスタルジックな生の軌跡である。そして、これを集約的に象徴するのが宝石箱であり、カノンの響きにほかならない。哀しみではない、生の哀しみが描かれた小説。
2023/10/20
starbro
柚木 麻子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 貧困にあえぐ苦学生の真央&没落した山戸家の生き残り・四葉との大河シスターフッド小説、良作ではありますが、帯の「100年後も残る傑作」は大袈裟過ぎます(笑)著者の高校生直木賞を受賞した『ナイルパーチの女子会』を超えていません。『オール・ノット』が、こんな意味だとは思いませんでした。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000374944 5月は、本書で読了です。
2023/05/31
さてさて
『そうだよ。全部ダメってわけじゃないんだよ。なにごとも』。そんな意味を持つ「オール・ノット」という言葉と、真珠の『ネックレスの技法』を掛け合わせた書名を冠するこの作品。そこには、主人公・真央の二十年にも及ぶ人生の苦悩と歓喜の物語が描かれていました。まさかの近未来の描写に興味が尽きないこの作品。そんな物語に顔を出す数多の社会問題に鋭く光を当てるこの作品。数多の社会問題と幅の広い時代背景を描いていくにも関わらず、軸が全くぶれない見事な構成力を見せる物語の中に柚木麻子さんの凄さを改めて見る素晴らしい作品でした。
2024/03/27
旅するランナー
横浜の歴史の中で、女性たちが繋げる、怒り·絶望·助け合い。エキセントリックな登場人物たちによる、山あり谷あり人生がごった煮のように語られます。生きる力がみなぎる女性たちに圧倒されます。少々離れていようが、バラバラになることはないのですね。
2023/06/23
うっちー
柚木さんの作品はやはり女性向きですね
2023/05/17
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