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ユートピア

ユートピア

ユートピア

作家
湊かなえ
出版社
集英社
発売日
2015-11-26
ISBN
9784087716375
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「ユートピア」のおすすめレビュー

湊かなえ、心理サスペンスの決定版! 港町で立場の違う3人の女性たちが出会う――たどり着くのは理想郷ではなく、歪んだ現実…

『ユートピア』(湊かなえ/集英社)

 誰かを打ちのめしてやろうという明確な悪意をもって、日々を過ごしている人などそう多くはいない。たいていの人は、自分の性格がよくはないという自覚はあっても、どちらかといえば善人だと信じているし、平穏無事で幸せに暮らしたいと願っている。だがこの“幸せ”というのが厄介なのだ。一人ひとり理想の形が異なるなかで「よかれと思って」が積み重なると、たどりつくのは理想郷ではなく歪んだ現実だけ。そんなことを思い知らされたのが、山本周五郎受賞の湊かなえさんの小説『ユートピア』(集英社)である。

 太平洋をのぞむ人口7000人の鼻崎町。物語の舞台となるこの港町に生きる人々は、そのほとんどが「悪い人じゃない」。たとえば、商店街の仏具店に嫁いだのをきっかけに、生まれ育った町に戻ってきた地元民の菜々子。のんびりやのお嬢様気質なところはあるけれど、彼女はいつだって、足が不自由で車いす暮らしの娘・久美香のために一生懸命だ。

 夫の転勤について東京からやってきた光稀は、内心田舎暮らしを軽蔑し、お高く留まっているところはあるものの、商店街で雑貨店を営…

2018/6/14

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ユートピア / 感想・レビュー

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starbro

湊かなえは新作をコンスタントに読んでいる作家です。本作は図書館の予約に少し出遅れて2ヶ月遅れで読みました。人間のいやらしさ、偽善、欺瞞を織り込んだ「ダークグレー湊かなえ」作品、一気読みしました。著者はユートピアなんて絶対ないと思っているのでしょうね。著者は本作をアルプスの少女ハイジ(正統)、家庭教師のトライ(パロディ)にインスパイアされて本作(イヤミス)を書いたのでしょうか?

2016/02/06

ウッディ

お花畑と青い海を臨む岬のある地方の街、ここで生まれ育った菜々子、水産会社に勤める夫の転勤でここに来た光稀、芸術家として理想の地としてここを選んだすみれ。3人女性は、商店街の祭の実行委員として出逢い、「クララの翼」という車椅子を支援するボランティア活動を始める。幸せに暮らし、この地をユートピアにしたいだけなのに、嫉妬、やっかみそして見下しなど、嫌な感情に振り回され、幸せを見失ってゆく女たちを描いた物語でした。殺人事件は無くても良かったかも‥。とにかくよく燃える街だった事、子供のズルさが印象的でした。

2018/11/24

風眠

どんなに小さくても、子どもは物事の真実を分かっている。上手く言語化できないだけで、心で見抜いている。大人の優越も、欺瞞も、不満も、裏も表も、全部見抜いている。見抜いた上で大人が望む子どもを演じている。よくよく思い出せば、私もそうだった。いつからだろう、子どもだから分からないと思うようになったのは。太平洋を望む海辺の町、自然派志向の移住者、転勤者、元から住んでいる地元の人間。ほんの少しのずれ、息苦しさ。事故で歩けなくなった女の子と、社宅の女の子。ラストの種明かしはまるでミステリ版『ふたりのロッテ』のよう。

2016/05/04

takaC

女はコワい。:-p

2017/04/29

かなえ

男性の心を描くより、女性の心を描いた作品のほうが巧いですね。「リバース」を読んだ直後だから余計にそう思います。いろんなタイプの女性たちの表と裏の顔。嫉み、ひがみ、羨望。いろんな感情が小さな町に渦巻いていました。素直な子供たちだって、どんなことを考えているのか…。わかったもんじゃないですよね。

2015/12/29

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