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その扉をたたく音

その扉をたたく音

その扉をたたく音

作家
瀬尾まいこ
出版社
集英社
発売日
2021-02-26
ISBN
9784087717419
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「その扉をたたく音」のおすすめレビュー

29歳無職の主人公が老人ホームで見つけたものは…瀬尾まいこさん最新作は一歩を踏み出す勇気をくれる物語

『その扉をたたく音』(瀬尾まいこ/集英社)

 瀬尾まいこさんの小説はいつも、とても優しい。でもただ優しいだけじゃなくて、主人公も読んでいる人も甘やかさないピリリとしたスパイスが効いている。その塩梅があまりに絶妙だから、読み終えたときには傷ついていた心がわずかに癒され、自力で一歩を踏み出してみようという勇気が湧いているのだと思う。最新作『その扉をたたく音』(集英社)の主人公・宮路はだいぶ甘ちゃんだけれど、それでも、その読後感は変わらない。

 宮路は29歳、無職。実家から毎月ふりこまれる20万円の仕送りで生活する彼はギターを片手に音楽の夢を追い続けている。といってもデビューのアテがあるわけでもなく、物語の冒頭で彼が演奏する舞台は老人ホーム・そよかぜ荘。観客である老人たちは白けた雰囲気を隠そうともしない。そんな宮路の前に現れたのが、ホーム職員の渡部。彼の吹くサックスは老人たちだけでなく宮路をも魅了し、そよかぜ荘に足しげく通うことに。

 この渡部と宮路のやりとりが、読んでいてまあ、ハラハラする。家庭の事情で小学生の頃から祖母と2人暮らしの渡部には、仕事をさしお…

2021/2/26

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その扉をたたく音 / 感想・レビュー

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さてさて

『俺だけが真ん中にいた世界は、もう終わったんだ』と顔を上げる宮路。そんな宮路が、人が関わり合いを持つ社会の存在を意識し出す様を見るこの作品。それは、『自分以外の人を愛することがどんなことなのか。自分以外の人と時間を共にすることが何をもたらすのか』という人と人との関わりが人生の中で大きな意味を持つかを教えてくれた物語でした。いつもながらに、ふわっと描かれる作品世界の中に、深い奥行きを感じさせてくれるこの作品。読後感が保証された瀬尾さんならではの優しい世界観に包まれた、人の心のぬくもりが感じられる作品でした。

2021/07/28

ウッディ

ミュージシャンを目指しながらも、覚悟もなく、親からの仕送りでダラダラした生活を送る29歳の宮路は、演奏で訪れた老人ホームで、介護士の渡部のサックスに魅了され、なりゆきで水木のばあさんの使い走りとなる。楽天的で自分勝手な宮路に、最初は反感を覚えながらも、優しく真面目で、なにより寂しがり屋の彼が愛おしくなってくる。「ぼんくら」と言い放題だった水木のばあさんの本心を記した手紙、特に大事にしていたハンドタオルの話にウルウル。太田君に続き、渡部君のその後も知ることができ、お得感のある一冊でした。

2021/08/28

ノンケ女医長

出版社の真意と少し違うかもしれないが、91歳の水木静江さんが書いた手紙 (195-6頁) を読み、とても感動した。そよかぜ荘に入り、人生が終わったと感じた、口の悪い静江さん。いろいろなことが分からなくなる前に、29歳のぼんくら息子に手紙をしたためた。裕福な家庭に生まれてしまい、本人なりに将来を悩み抜いてきた宮路は、人生の大先輩から受け取った封筒と手紙を、今後ずっと大切にすると思う。心を揺さぶる音は、確かにいたる場所で奏でられているかもしれないが、著者の「心を揺さぶる文章力」には遠く及ばないと改めて思った。

2021/03/09

うっちー

私は宮路タイプ、渡部さんはめちゃくちゃ強い人。

2021/03/21

bunmei

それぞれの生活の中で、一歩を踏み出せない時、人生の岐路に立った時に、人と人との関りを通して、そっと後押しをしてくれる内容の瀬尾作品。今回は、アラサーで親の仕送りを頼りに、定職にも就かず音楽への夢を捨てきれず、ブラブラしている男・宮路が、新たな扉を開いていく物語。その舞台となるのが、老人の介護施設。そこで知り合った、老人達と素敵なサックスの音色を奏でる介護士の青年・渡部との交流を通して、これまで自分では気づかなかった、新たな自分を発見する。と共に、満たされなかった心の隙間を、温かな充実感で埋めていく。

2021/06/04

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