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砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
2003-03-01
ISBN
9784101121154
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ジャンル

「砂の女 (新潮文庫)」のおすすめレビュー

生誕100年 安部公房の代表作『砂の女』ってどんな話? 絶えず砂が降り注ぐ穴の中の家に閉じ込められた男の救いとは

『砂の女(新潮文庫)』(安部公房/新潮社)

 2024年は小説家・安部公房生誕100周年。本記事でご紹介するのは、同氏を世界的に有名な作家に押し上げた『砂の女(新潮文庫)』(安部公房/新潮社)です。

 玉手箱、打ち出の小槌、桃……。時代を越えて読まれる物語には何かしらシンボルがあります。本作のシンボルは「砂」です。まずは、あらすじをご紹介しましょう。

 ある8月の午後、31歳の教師・仁木順平は新種の虫を採集するために砂丘にある部落の一角に向かう。帰りのバスがなくなってしまったところ、寡婦が一人で住んでいる民家に泊まるよう案内される。アリ地獄のように、穴の中にあるその家に縄梯子で下りていく仁木。一夜明けると、縄梯子は取り外されていて、仁木は閉じ込められてしまう。女は砂嵐で夫と娘を亡くしていたが、「女手ひとつでは暮らしていけない」という理由から、部落の策略で女のパートナーとして仁木が乱暴にもあてがわれた。仁木は脱出を試みるも失敗。こうして、女との奇妙な共同生活が始まる…

 本作において砂は「流動性」の象徴として描かれています。砂漠・砂丘というのは乾燥している…

2024/4/3

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安部公房『砂の女』あらすじ紹介。砂の地獄に囚われた男が辿る運命とは

『砂の女 (新潮文庫)』(安部公房/新潮社)

 31歳、教師の仁木順平という男は、8月に休暇を取って趣味の昆虫採集のために海岸の砂丘に行く。そこには今にも砂に埋もれそうな部落があった。終バスを逃した彼は勧められるがまま、そのうちの1軒の、深い穴の底にある民家に泊まることにした。その家では、寡婦がひとりで砂掻きに勤しんでいた。

 翌朝男が民家を出ようとすると、地上に上がるための縄梯子が外されており、男は家から出られなくなった。常に穴から砂を運び出さなければその村は崩れてしまうため、村人は砂掻きの人手を欲していたのだ。騙されて穴に閉じ込められた男は、埋もれる家で女と砂を掻き出しながら同居生活をすることになってしまう。

 女と肉体関係を持てば出られなくなると思いながらも、しばらく経つとふたりは関係を持つようになる。それでも脱出と抵抗を試みた彼は、廃材で梯子を作り、やっとのことで地上に出る。しかし逃走中に砂で溺れ死にそうになり、追手の村人たちに救出される。そして再び女の家へと閉じ込められてしまう。

 男は、しばらくは波風を立てないようにと穴の中で真面目に砂…

2018/6/28

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「この指がなまなましく覚えている」味わい深いエロ! 【文豪に学ぶ官能表現講座】

 文学と言われると、なにか崇高でお堅いものをイメージする方もいるかもしれないが、名作とされる文学にはかなり踏み込んだ性描写が実際多く存在する。ふだん我々が、単に「エロいなぁ」「興奮するなぁ」という言葉だけで済ませているようなシチュエーションや心理状態も、文豪の手にかかれば一層輝くのだ。「そんな言葉で例えるの!?」「こんなに細かく説明するの!?」「自分では言葉にできなかったけど、これを読んだら自分があの時どうして興奮していたのかが分かる気がする!」などと感じさせられる文豪たちの官能的な文章を5点ご紹介したい。

■湯上り姿は15~20分後が旬! ——谷崎潤一郎『痴人の愛』

『痴人の愛 (新潮文庫)』(谷崎潤一郎/新潮社)

 やはり文学に潜むエロと言えば、この人は欠かせない。谷崎潤一郎は性をテーマに描いた名作を多く生み出しているため学校で習うことは少ないが、そのクオリティは凄まじい。代表作『痴人の愛』は、真面目な男がいずれ自分の妻にするために15歳の少女を育てるが、次第に少女の魔性にとりつかれ下僕になっていく様子を描く物語だ。

一体女の「湯上り姿」と云うもの…

2018/6/17

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砂の女 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

再読。閉じ込められた砂をひたすらに掻き出す作業―安部版シジフォスといった不条理の物語。ただし、最後はこれを受け入れるというきわめて東洋的な解決に終わる。砂に埋もれる焦燥が、細部に至るまでの実に緻密な描写力に支えられ、圧倒的なリアリティを現出させる。比喩の巧みさも卓越。

2012/03/28

風眠

高校生の頃はじめて読んでから、もうこれが何度目の再読になるだろう。何度読んでも圧倒的に凄まじい。砂に埋もれた集落、一般社会から切り離された砂の世界に絡め取られてしまった男、脱出を夢想し毎日砂と格闘する。そして一緒に暮らすのは、砂しか知らない孤独で無知な女。異質なのに人を惹きつけてやまない魅力的な情景描写と、不気味で従順な女のエロさが何とも印象的。冒頭の「罰がなければ、逃げる楽しみもない」という一文。「罰」ってなんだろうって、ずっとずっと考え続けている。

2012/11/18

パトラッシュ

舞台化を観に行くので云十年ぶりに再読した。暑苦しい真夏に読むと汗まみれの肌に熱い砂がまとわりつくようで不快になるが、砂丘のあばら家に女と共に閉じ込められた主人公がコロナ禍で外出自粛を強要される自分たちと重なる。感染が危険だと日々言い立てられ、いつの間にか自由を奪われた状態が当然で心地よくすら感じられる世界。「人というものは馴れる生き物」(ドストエフスキー)なので、蟻地獄に落ちて都会暮らしの常識を奪われた男も異世界での生活が心地よくなってしまったようだ。そんな人の弱さ愚かさこそ著者が描こうとしたものなのか。

2021/08/28

抹茶モナカ

寓話的な作品。罰がなければ、人間は逃げる喜びすら、感じないのか。理数系よりの知識、思考を展開しながらも、語られる言葉は文学の言葉だ。いろいろな読み方が許される文学作品で、労働について、僕の場合は考えた。

2014/01/11

遥かなる想い

安部公房は密閉された空間を描くのが得意であるが、本書は突然女に閉じ込められた男が脱出を図ってもがく様を描く。世界20数ヶ国語に翻訳紹介された名作だというので、読み始めたが、正直普通の本とは全く違う世界に困惑をした。我々が何気なく生きていく日常とは何ともろいものか、サスペンス的な雰囲気で 読者を虜にする本だと思う。うまく説明できないが、「砂の女」に登場する女がひどく世俗的で汚れていたイメージがあって、みだらに思えた記憶がある。

2010/06/20

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