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鬼神

鬼神

鬼神

作家
矢野隆
出版社
中央公論新社
発売日
2017-03-08
ISBN
9784120049514
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ジャンル

鬼神 / 感想・レビュー

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Bugsy Malone

頼光四天王による大江山鬼退治伝説、酒呑童子は何故鬼と呼ばれ退治されなくてはならなかったのか。鬼とは都の埒外に在る者、土蜘蛛然り天狗も然り、人である。説自体は最近良く耳にもするし、そう、なのだろうと思う。この物語では、足柄山から下りてきた坂田公時もまた出自は鬼であり、人として鬼と戦う事に懊悩し、割り切れないものを感じながらも鬼退治と称した戦いに向かう。心を通わせる酒呑童子と公時、そして頼光。貞光や綱、季武の存在もいい。酒呑童子となった朱天と頼光の決断は、熱い涙と滾る心を呼び覚ます。良かった。非常に良かった。

2017/10/29

NAO

【「男祭り」参加】坂田公時を主人公とした大江山異聞。「鬼」とはいったい何なのかを作者なりに考えてみたファンタジーなのだと思って読むと、これはこれで結構面白い。都になびかないものを「鬼」として蔑み排除する都のやり方の勝手さ、グロテスクさ。「鬼」と呼ばれた公時も、綱も、朱天もやさしくも哀しい存在なのが、なんとも哀しい。それにしても、ここに描かれた安倍晴明はすごい存在だった。ずっと権力の中枢にいた老獪な陰陽師。確かに、夢枕獏が描くような清々しさだけではなかっただろうと思う。

2018/06/26

この国にまだ神と鬼がいた時代ーこれもまた、人であるのに人として扱われなかった者たちを描いた物語。私利私欲に塗れた都人と里の民を守ろうと戦った者と、一体どちらが鬼と呼ばれるに相応しいか。人を人として扱わない、その所業こそ鬼ではないのだろうか。そんな憤りも感じる中、相対する立場でありながらも心を通わせ合った朱天と源頼光、坂田金時たちの姿に胸が熱くなった。鬼と蔑まれ、最期には自ら鬼を名乗って散って行った朱天。もちろん彼の中に戦いを求めた心があったのも本当だろうが、それでも、彼はやはり間違いなく人であったと思う。

2019/11/14

よこたん

“戦った。生きた。鬼だろうが、人だろうが、どっちでも良い。朱天という存在は、最後の最後まで男として生きた。それで満足だ。” 見事に散った命は、煌きとなってずっと仲間達をを護り続けることだろう。出自、外見、行いで鬼とされるわけではない。本当の鬼は、人の心のなかにこそ棲む。都の外側に居る者は全て鬼の類いとは、なんと高慢な思想なんだろう。感情むき出しの道長と、老獪な安倍晴明がとても憎たらしい。頼光四天王の個々の癖が強い。ああ、貞光のイメージが…(笑) 公時の母の子を思う心と気高さと、二度の別れに涙が溢れた。

2020/01/28

はじめさん

山で病んだ母と暮らす偉丈夫の坂田公時のもとに現れた武人・源頼光。父親がその郎党だった縁と従者にフルボッコにされた事により、配下となり都へ。陰陽頭、安倍晴明から異界たる山暮らしは人にあらず鬼、だが武勲をたてれば都では人となれると告げられる。時を同じくして山の民=鬼たちの暮らす山で、獣はおろか木の実さえ採取できぬ異変が。鉱物資源を狙う安倍晴明の張り巡らせた奸計…首領である朱天は苦渋の選択で都へ強襲部隊を送り食糧を盗んでくるが、これにて「鬼退治」の大義名分は整った。かつて鬼だった公時の鉞は負の連鎖を断ち切れるか

2019/08/25

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