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月人壮士 (中公文庫 さ 74-3)

月人壮士 (中公文庫 さ 74-3)

月人壮士 (中公文庫 さ 74-3)

作家
澤田瞳子
出版社
中央公論新社
発売日
2022-12-21
ISBN
9784122072961
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月人壮士 (中公文庫 さ 74-3) / 感想・レビュー

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クプクプ

古代724年、聖武天皇即位。澤田瞳子さんは以前からセリフが面白い作家だと思っていましたが、この「月人壮士(つきひとおとこ)」は物語の全てがセリフと語りで作られていることに大きな工夫を感じましたし、それが読みやすさにつながりました。男女の性の話から銅鏡の話がよかったです。また女性の狩りの話は、古代のファンタジーとして成功していました。私は歴史に詳しくないので、物語のオチが理解できなかったのが、今後の課題です。今までにない澤田瞳子さんの一面が見られた作品でした。

2023/02/23

エドワード

日本史の授業での聖武天皇は、華やかな天平文化を生んだ偉大な天皇である。しかし、聖武天皇こと首皇子ほど、自身の内面の矛盾と孤独に苛まれた天皇はいない。連綿と続く皇統の中で、初めて藤原氏の母を持ち、天照大神の末裔でありながら、外来の仏教に帰依した天皇。皇太子とした娘の阿倍内親王(孝謙天皇)は子孫を残さず、自身の血統の断絶を予感していた天皇。彼には日嗣の子ではなく月人壮士が相応しい。「海と山、月と日、陰と陽。あの方のご生涯は、激しい矛盾と対立そのものであったかもしれぬな。」藤原仲麻呂の言葉が真実をついている。

2023/01/28

みこ

螺旋プロジェクト奈良時代編。どの作品も単体で読んで十分面白いのだが、本書は特に面白かった。聖武天皇にプロジェクトの本質である海族山族の設定を盛り込んだ上で人物像に大胆な新解釈を加え、それでも史実との整合性が取れている。それでいて人の本質が周辺人物の証言で掘り下げられても本人にしか分からないものがあると奥深い解釈もできる。同時期に同じ出版社が「奈良時代」という新書を刊行したのは本当に偶然だろうか。こちらはお陰で背景が理解できてスッキリ読めたから助かったけど。

2023/01/11

まあか

藤原氏の栄華の影に飲み込まれた聖武天皇。聖武天皇に携わった者たちの語り部で明かされる真の姿。自分に流れる血には、どうしたって抗えない。あまりにも不憫であり、帝という立場ゆえに誰にも胸の内を吐露することのできない辛い境遇に、読んでいて胸が痛んだ。高貴で雅な朝廷が孕む権力争いの闇。とても、面白かった。澤田瞳子さん、他作品も読んでみたい!螺旋プロジェクトに引っ張られて手にしたが、読めて良かった〜♡

2023/01/28

活字の旅遊人

聖武天皇の苦悩を、その死後に関係者たちが語りながら探っていくような展開。八組の作家が集まった「螺旋プロジェクト」として作られた一冊。その苦悩を「プロジェクト」で入れ込むべき二項対立としても描ききる。なるほどなあ。今まで聖武天皇のそうした面に注目したことはなかったが、確かに自分の血筋に嫌悪があってもおかしくないな。むしろ藤原べったりの印象だった。この頃だと既に皇統もかなり神聖なものと位置付けられていたのかな。21世紀、令和の今でもこの件についてはいろいろと考えさせられる。各話の中では、佐伯今毛人が良かった。

2023/04/26

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