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官能と少女

官能と少女

官能と少女

作家
宮木あや子
今井キラ
出版社
早川書房
発売日
2012-07-06
ISBN
9784152093073
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官能と少女 / 感想・レビュー

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徒花

レズビアンとかロリータコンプレックスとかペドフェリアとか、世間で言うマイノリティな性的志向(嗜好)を持った人々のエロス(生への渇望)の物語を集めた短編集。エロティックではあるけれど、直接的な性描写はなく、感傷的になり過ぎないバランスの良い文章で読みやすい。愛というよりも「執着」をテーマにしてる、といったほうが正確かも。いずれも明るい話ではないけれど、かといって暗くなるような読後感でもない。こういう本も決して嫌いじゃないけど、あえて人に薦めるほどではないかな。

2018/05/24

優愛

「何かが取り壊されたあとの空き地に、元々なにがあったかなんてほとんどの人は覚えてない」真新しさの恩恵に浸るうちに私達は少しずつ、少しずつ大切な何かを忘れていく。それを覚えていたいなんて安易な願いだ。傷ついて、傷つけられた身体だけが覚えている感覚描写は目眩がする程残酷で甘美な世界観そのもの。自分から拒んでおきながら愛情や欲望だけは一人前に得ようとする浅ましさと、垣間見える幼さ故の何か一つ欠けた様な少女らしさは対極にあるように見えるけれどその距離は測り知れない。胸の奥深くを抉られるような印象強いお話ばかり。

2017/06/18

甘い甘いお菓子がどろどろに溶けて、触れることが容易くない歪みきった世界観。少しでも触れてしまえば、きっと歪んでしまう。倒錯的で淫らで甘ったるい。短篇集だけど、一気に読んでしまったせいで胸焼けしてしまった。さすが宮木さん。他の作品のように愛情だとか、真実なんてものは感じられない。もう何が正常で何が異常なのかするわからない、そんな彼女たちの世界。たまにはこんな世界に浸るのも悪くないかもしれない。けれど深入りは禁物。「ねえ、鏡に映るおまえは誰と交わっているのですか。誰を殺したいんですか。」

2015/03/10

ひめありす@灯れ松明の火

甘い甘い毒。むしろ苦み迸る甘さ。口の中で直接味わう自分の血液。苦甘い甜茶グミ。舌の先で知る金属の刺激臭。ふわふわファーのうさぎコート。フリル、リボン、レース。過剰な甘さがもたらす痛み。それは直接啜る蜜。甘過ぎるドーナツが喉元で苦さを覚えるのに似て、氷菓が耳の奥を嘖むのに似て、自家中毒を起こす。官能と少女。少女は官能の主体にはならない。何故なら少女は処女であって穢れてはならない。だから少女は官能を主観で捉えたりしない。官能の主体は少女が置き去りにしてきた何かであったり、もう本当は少女ではない物なのだろうなあ

2013/01/29

優希

少女たちが主人公の官能小説です。痛みを伴うエロスが体を突き刺します。歪んだ愛の上で抱いて抱かれる。大人たちの玩具のように扱われても、それが日常になっていて、普通に過ごせるのが息苦しさを感じました。何処か病んでいる気怠さがあり、そこはかとなく美しく見えます。性に溺れ、救いの見えないほの昏い世界が官能の中に生きる少女の姿なのかもしれません。危うくて清らかなものが壊れていく世界に引き込まれました。まさに『官能と少女』の煌めきが満ちていたように思います。

2015/11/16

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