いけないII
「いけないII」のおすすめレビュー
最後のページの写真から推理を巡らせる! 果敢な企みに満ちたミステリの金字塔、道尾秀介氏の『いけないⅡ』
『いけないⅡ』(道尾秀介/文藝春秋)
道尾秀介氏の『いけない』(文藝春秋)は、ミステリとしても、エンタメとしても、サスペンスとしても、まったく非の打ちどころのない稀有な小説だった。特に斬新だったのが、各章の最後に地図やイラストや絵が置かれており、それが謎解きのヒントになるという企み。そんな『いけない』の続編的な道尾氏の新刊『いけないⅡ』(文藝春秋)には、各章の掉尾に写真が掲載されており、これが推理の鍵となる。
物語の舞台は、牡丹栽培が盛んな箕氷市。閑散とした街は凍てつくような寒さであり、実際、観光スポットである明神の滝は真冬には完全に凍結する。また、街の情景描写からも不穏でひりひりした空気が伝わってくる。それも相まって、穏やかだった家庭や平和だった日常に、唐突にひびや亀裂が走り――。そんな陰鬱とした展開が多く、小説の中核を成している。
第一章「明神の滝に祈ってはいけない」は、女子高校生が1年前に姿を消した姉を探すうち、姉のSNSの裏アカウントを見つけて、単身、明神の滝へと赴く話。姉はきっと滝に願い事をしに行ったに違いない。そう確信した女子高校生は…
2022/12/2
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いけないII / 感想・レビュー
starbro
11月の第一作は、新作をコンスタントに読んでいる道尾 秀介の最新作、「いけない」シリーズ第二弾です。仕掛けミステリですが、肝心の写真が、とってつけたような安っぽい感じで興醒めでした(笑) https://books.bunshun.jp/articles/-/7527?ud_book
2022/11/01
ノンケ女医長
今回も「買って良かった」と思うことができた。大人の価値観、思惑に翻弄されながらも、立ち向かい懸命に生きようとする子どもの描写が、道尾作品はいつも精緻。読みながら感情が大きく揺さぶられた。ひときわ「恐怖心」に焦点が当てられているように感じ、読み終わった後にも作品世界が頭から離れない。自然描写の豊かさは、いっそう迫力を増している。言い伝えられる由縁と、託された願いがどう結実していくのか、どきどきした。各章末に付された写真にも、空恐ろしい気持ちになった。
2022/10/30
うっちー
ネタバレ読んでで驚き。なんかスラスラ読んでしまいました
2022/11/22
旅するランナー
牡丹祭りで有名な箕氷(みごおり)市、鶴麗山(かくれいざん)。地名の由来は「身凍り」「隠れ山」だという。ここで起こる事件の連鎖が、被疑者·被害者·警察官の視点を絡めながら描かれます。人間の弱さ·悲しさと、完全にウラをかかれる展開に感動すらする、見事なストーリーテリング。すべての人と行いが見えない糸で繋がっているのです。道尾という名前は「未知緒」からきているに違いない。
2023/01/21
イアン
★★★★★★★★★☆写真を駆使した体験型ミステリ『いけない』の続編。1年前に失踪した姉を捜す桃花は、失踪直前の姉がいわくつきの滝を訪れていたことを知り…(「明神の滝に祈ってはいけない」)。架空の都市「箕氷市」を舞台とした連作短編集で、人物や出来事がリンクしつつも本文では全ては明かされない。「章末に添えられた写真が暗示する真実をあなたは見破れますか」という技巧に満ちた意欲作。次章で答え合わせのような記述がある分前作より難易度は低めだが、その真実が示すおぞましさに戦慄する。この作品を寝る前に読んではいけない。
2023/06/24
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