まずはこれ食べて (双葉文庫 は 33-03)
「まずはこれ食べて (双葉文庫 は 33-03)」のおすすめレビュー
食べることは生きること。疲れた心と体に染みる、美味しい連作短編集『まずはこれ食べて』
『まずはこれ食べて』(原田ひ香/双葉文庫)
疲れている時、心が荒んでいる時、温かいご飯をお腹に入れると、それだけでホッとする。しかし、そういう時ほど忙しさにかまけて食事を疎かにしてしまう人も多いだろう。
そんな忙し過ぎる現代人の心とお腹を満たしてくれる、豚汁のような小説がある。原田ひ香氏による新著『まずはこれ食べて』(双葉文庫)は、具沢山で、温かくて、読むごとにじんわりと心身が満たされる珠玉の連作短編集である。
物語は、学生時代の仲間同士で起業した会社「ぐらんま」を舞台にはじまる。「ぐらんま」は、経営こそ軌道に乗っているものの、スタッフは業務に忙殺され、オフィスの掃除にまで手が回らない状態が続いていた。日頃の食事もインスタントで済ませる人が多く、職場の殺伐とした雰囲気と社員の健康面に不安を覚えたCEOの田中は、ある日「家政婦を雇おう」と提案する。
派遣されてきた家政婦の筧は、話し方こそぶっきらぼうだが、家事全般をきっちりこなす優秀な人材だった。水垢だらけの洗面台や風呂場はピカピカに磨き上げられ、出汁から丁寧に取った和食は、味わい深く体にやさしい…
2023/4/14
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まずはこれ食べて (双葉文庫 は 33-03) / 感想・レビュー
ALATA
原田さんの読み物は美味しさ満点だ。学生が立ち上げたベンチャー企業に請われて派遣された家政婦の筧さん。ごつごつした細い体、しなやかな白い指から生み出される独創的な料理がこわばった心を解き放つ、そんなじんわりと温かい連作短編集でした。アラサーの胡雪が直面する孤独、マイカが抱える家族問題、人生楽勝とうそぶく大悟、「まずはこれ食べて」仕事を家庭をリセットするには美味いものが一番だ★4※エピローグで語られるみのりの秘密もスパイスがきいていい味出てました♪
2023/12/19
ノンケ女医長
家政婦の、筧みのりさん。彼女の作る料理は、どうしてあんなに、美味しくて、感動を与えるのか。どうしてあんなにも、絶妙のタイミングで、心地良い時間を提供できてしまうのか。ベンチャー企業「ぐらんま」の若い社員たちが、舌鼓を打って会食を楽しんでいる様子を読んで、ほっこりする。筧さんが経験してきた、尋常でない苦難と、それでも前を向いて歩んでいく気概。勇気を分けてもらったような気がして、とても良い読後感だった。筧さんだからこそ見抜けた、人の心の弱さと、切なさ。小説の隅々に気遣いが感じられて、思わずため息。
2023/08/19
はにこ
題名と中盤までの流れを読んでいて、美味しいご飯にベンチャー企業の男女が癒やされる話かと思っていたのたが、まさかの展開。姿を消したかつての起業仲間がどうなったのかと思っていたら思いもよらぬ感じで出てきた。この作家さんの作品、時々最後にちょっと苦めの終わり方になるね。それはそれで面白いんだけど。
2023/10/03
ニッポニア
Audible。終盤までは、美味しい食べ物で癒される小説だったけれど、急展開には驚いた。が、みんな、それが読みたくて手にとったわけじゃないような・・・。初読みの作家さんなので、そういうジャンルを織り交ぜたような作品を描く人なのかもしれません。サクッと読めて、食べ物は美味しそうで、ちょっとした料理のコツを掴むこともできる。なんにもなくても、美味しいものを食べればやっていける、というシンプルな感想を書きたかったけれど。
2023/10/01
アッシュ姉
マンションの一室がオフィスのベンチャー企業は多忙で寝泊まりする者も多く、食生活や部屋は乱れ放題で殺伐とした雰囲気。そこへやってきた家政婦さんは愛想はないけど、温かいご飯とさりげない気配りでみんなを癒してくれる。料理がどれも美味しそうでホカホカしたが、それぞれが抱える悩みや事情が浮き彫りになると一変ヒリヒリする。彼はひどかったなあ。実は~とちょっと期待していたのに何でだあ!丸飲みできないところが原田ひ香さんの魅力のひとつなのかも。止まらず連続ひ香さん三冊目へ。
2023/07/23
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