Kの昇天 (立東舎 乙女の本棚)
Kの昇天 (立東舎 乙女の本棚) / 感想・レビュー
アキ
梶井基次郎の短編。しらこの絵が幻想的な物語を彩ります。月の影を追いながら、イカルスの墜落を何度も経験しては、月光を遡って昇天することを夢想するK君について語るわたしは、K君の知り合いから溺死した原因は自殺か過失かと尋ねられ、月へ飛翔したためだろうと手紙で答えます。K君もわたしも、まるで浮き世から離れた存在であるかのように感じます。満月の夜は人をそんな狂気に陥れる不思議な力を持っているのでしょうか。今宵も満月です。月が南中する時間帯に海辺を散歩するのはやめておくのが身のためです。
2021/11/18
寂しがり屋の狼さん
【乙女の本棚】シリーズ23冊目📕梶井基次郎さんは本作2冊目、挿絵は初の『しらこ』さん(◕ᴗ◕✿)31歳の若さで逝去した『梶井基次郎』の作品もこのシリーズを読み続けていなければ出会えなかったと思います。
2022/01/10
たまきら
乙女の本棚シリーズを楽しませてもらっているけれど、現在の所とても不満なのは、いつまでたっても男性作家ばかりが紹介されていることでしょうか。しかもどこかホモソーシャルというか、男子高出身の成績優秀者ばかりが描いた頭の中だけで作り出された文が多くて…いや、いいんですけどね、なんだか「男が理想とする乙女」が鼻につき始めたのかなあ…。この文章を読みながら、ぐるぐるとそんな感情を持て余しました。
2024/01/07
(*'ω' *)@k_s
県立図書~「乙女の本棚」~梶尾基次郎×しらこ~助からない命、逃れられない死、影の中に見える“もう一人の自分”、生と死の綱渡り。しらこさんの淡い描写が、追憶が可視化されたようで、とても合っています。タイトルに『Kの昇天』~或はKの溺死~とあり、読む前には意味がわかりませんでしたが、読み終えて納得。物書きが死を意識した時、作品はこのような形で昇華されるのでしょうか。とても叙情的な一冊。
2022/11/05
ぐうぐう
影に取り憑かれたKの物語。影はつまり、もう一人の自分だ。影を意識すればするほど、影に人格が宿り、と同時に自身の魂が浮遊し始める。影に乗っ取られるかのような状態は、死を重ねずにはおれない。そこには、結核を病んでいた梶井基次郎の、切実な胸中が投影されているのかもしれない。幻想的でありながらも、一種のミステリ仕立てになっているのが興味をそそる。しらこの画が、幻想とミステリ、その両立を見事に表現している。
2022/12/27
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