「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第4回

文芸・カルチャー

2017/12/1

 ダ・ヴィンチニュースは、雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長コラム」企画をスタートしました! 今回ご登場いただくのは『MOE』の門野編集長です!

 いきなりですが、MOEは2017年12月1日発売にて創刊40年を迎えました。創刊時は「絵本とおはなし」という雑誌名でスタートし、1983年12月号から「MOE」という名前に改名しました。世界でおそらく唯一の絵本専門の月刊誌として、40年生き残ってこられたことは大変すばらしいことだと思います。そして、絵本を愛し、ささえてくださった読者の皆さまにこの場を借りて御礼申し上げます。まだまだこれから。新しい試みにも挑戦しながら、楽しい誌面をお届けしていきます!

1983年MOE12月号

 そんなMOE40年目第1号の特集は、絵本ではなく作り手である「絵本作家」にスポットをあてて特集をさせていただきました。

 謎につつまれた絵本作家の生態を知ってみたいと思いませんか?

 今回は約100名の絵本作家の方々に同じ質問でインタビューとアンケートを行いました。

質問項目は以下の通り

① お名前・生年月日・出身地
② デビュー作(作者名・出版社)
③ なぜ絵本作家になろうと思ったのでしょうか? そのきっかけを教えてください。
④ 絵本作家になってよかったこと、よくなかったことがあれば教えてください。
⑤ ご自身の作品の中で、読者に見てもらいたい一番のポイントはどこですか? 
⑥ いま夢中になっていることや趣味があれば教えてください。
⑦ 座右の銘や好きな言葉があれば教えてください。
⑧ 毎日をどんな風に過ごしていますか? 1日のスケジュールを円グラフにしてください。

 正直、100名もの絵本作家さんからこれだけの回答をいただくのはすーごく大変でした。ただ、苦労した甲斐のある誌面が完成しました。絵本好きも初心者も、絵本関係者も満足できる内容だと自負していますので、ぜひ読んでください!!

 長い宣伝と前置きになってしまいましたが、今回のコラムは「職業としての絵本作家」についてです。ちなみにMOE1月号の特集では扱っていないテーマです。

 皆さんの中には「絵本作家になってみたい」という方もいると思います。

 ただ「果たして絵本作家になったら生活していけるのか?」というところは気になりますよね。というわけで、ビジネスの面から見た絵本作家という職業を考察していきたいと思います。

 皆さんが絵本作家としてデビューする方法はいくつかあります。

 たとえば、「新人絵本賞に応募する」「出版社に持ち込みをする」「画家やイラストレーターとして出版社の人に声をかけられる」「自費出版をする」などです。

 いずれのスタートでも問題ないのですが、職業としてやっていく場合は1冊出して終わりでは成り立たないので、複数の絵本を定期的に発売する必要があります。

 ちなみに国税庁調べでは、平成28年度の日本の平均年収は422万円と報告されております。この年収を基準として稼ぐためには絵本作家としてはどうすればよいのでしょうか?わかりやすくするため、ここでは絵のグッズ化など派生して生まれる利益は省かせていただきます。

 基本、絵本作家の受け取れる利益は印税のみです。マンガのような雑誌の連載とは違って描きおろしの絵本には原稿料がありません。仮に絵本1冊の単価1200円(1000円~1500円が多い)とします。印税はわかりやすく10%(5~8%の場合もあります)とします。そうすると、1冊売って120円の利益があがります。単純に計算すると422万円稼ぐのに約3万5200冊売ることが必要となります。新人作家の初版部数を5000部(絵本業界の現状を考えると良い方)と考えると、年間7冊は絵本を発売する必要があります。

 残念ながら、年間7冊出している絵本作家はほぼいないです。作画時間、そして何よりも新人作家に絵本の出版社からそんなに多くの依頼が来ることはまずありません。

 結論として職業として考える場合、新人がいきなり絵本作家一本でやっていくのはなかなか難しいと思われます。

 バッサリと絵本作家を目指す人たちの気勢をそいでしまい申し訳ありません!でも「絵本作家を目指すな!」と言っているわけではないのです。現状を知ったうえで目指した方が後悔しないと思います。

 私自身も多くの人に絵本作家を志していただきたいので、今度は絵本作家の目指し方を考察していこうと思います。

 絵に自信のある方。最初から絵本だけに固執しない方が良いでしょう。画家、イラストレーター、漫画家、雑貨デザインなどなど絵を活かした職業は世の中にたくさんあります。さらに言うと、多くの絵本作家がいろんな創作活動と並行して活躍されています。さまざまな創作経験が絵本につながるのでおすすめします。

 また一方、全然関係のない仕事をすでにされている方。まず絵本作品を作り、新人絵本賞などへの投稿をおすすめします。できれば絵本出版社(もちろんMOEでも)が良いでしょう。投稿の結果によっては絵本の出版につながりますし、なにより見込みのある新人には担当編集者がつきます。担当編集は作家と読者をつなぐ架け橋であり、作品作りにおいての道しるべになります。やみくもに作品をつくらないことは職業としてやっていくうえで大切なことだと思います。ただし、注意点としてはそこで期待感を持って本業を辞めないでください。あくまでもスタートラインに立っただけで職業としてはまだまだこれからです。極端なことを言うと、ヒット作(1万部以上の作品)が最低1冊以上生まれるまでは様子をみてください。

 他にもいろいろあるのですが、長くなってしまったのでまたの機会にさせていただきます。

 以上、絵本作家についてビジネスという観点から検証させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? ただ今回書いたのは、大雑把でかなり偏った内容ですのであくまでも一つの考察として参考にしてください。絵本作家が、ビジネス以上に夢と希望を伝えることのできる素晴らしいアーティストであるということは今回は省かせていただきます。

 そんな絵本界で活躍されている作家100名以上がMOE1月号に登場しています。絵本に対するこだわりと情熱は、これから目指す人にとっても非常に参考になると思いますのでぜひ読んでください!

今回もMOEが誇るスペシャルなふろく!

「ヒグチユウコ 犬のポストカード4枚セット」 

 ヒグチユウコさん描きおろしのかわいいワンコのポストカードがなんと4枚も!注目ポイントはワンコといっしょにヒグチ作品おなじみのキャラクターも登場しているところ。たぶん保存用と使う用必要ですね!!

『月刊MOE』最新号は12月1日(金)発売!

『月刊MOE』1月号(白泉社)
毎年完売することが多いのでお早めにどうぞ!
リンク先アドレス:http://www.moe-web.jp/moe/20181.html

門野隆(かどのたかし)編集長
1974年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後の1999年に株式会社白泉社入社。青年漫画誌『ヤングアニマル』にて15年、「コンテンツビジネス部」にて2年を経て、2017年12月よりMOE編集部所属および編集長に。MOE編集部に来てはじめて子どものころ意外とたくさんの絵本を読んできたことに気づく。

▶『MOE』公式サイトはこちら

▶次回の門野編集長のコラムは、1月初旬更新予定です!

「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第3回
「大人が絵本を読むのって変ですか?」『MOE』編集長コラム第2回
「大人が絵本を読むのって変ですか?」 『MOE』編集長コラム第1回