20年で1000人以上! インタビューを「道具」として使い続けた先に見えた新しい可能性とは?

文芸・カルチャー

2017/7/24

『インタビュー』(木村俊介/ミシマ社)

 テレビや新聞、雑誌、インターネットなど、あらゆる媒体で日々目にするインタビュー。取材対象者が元々知っていた著名人であれば、それまでの印象が変わるような新しい何かを発見したり、知らなかった人であれば、その内容を通して、人物や背景にある世界に興味を持ったりするきっかけになることもあるだろう。

 そういったインタビューとは、実際どのように作り出されているのだろうか。視聴者、読み手は、取材対象者が語っていることがありのままに映像で流れてくる、または活字にされていると思っているかもしれない。だが実際には、取材者によって取り組み方は大きく異なり、その方法によってはそこから伝わる本質も変わってくるようなのだ。

 『インタビュー』(木村俊介/ミシマ社)は、20年以上にわたり、一般の職業人から著名人まで合わせて1000人以上にインタビューをしてきた著者が、インタビューとは何か、何ができるのか、取材の中で見えた現実と、その経験から考えさせられたことを書きまとめたノンフィクションである。

 インタビューにはいくつかの共通点はあるものの、訊き方もまとめ方も立場やジャンル、各個人によって異なる基準でなされている。実践していく工程には、依頼、準備、本番、テープ起こし、まとめという段階がある。編集者などの取材者以外が行う部分もあるが、自らが取材対象者になることもある著者は、取材者と取材対象者双方の視点から、依頼の仕方、本番にのぞむ姿勢、質問の内容、文章の記し方など配慮すべきポイントを細部にわたって紹介している。できるだけそれらを自らが行い、準備にはたくさんの時間を費やすこと。その分だけ、取材から多くの内容を得られるような気がするのだとか。

 現在は発信される場も多く、ネットで検索すれば情報がすぐに出てくる時代。すでに世に出ている内容とほとんど変わらない記事や書籍にしてしまうインタビュアーも少なくなく、取材の世界には「にせもの」があふれているという。インタビューの本来の魅力は「偶然」や「不安定さ」から来るもので、すでに語られたことのある過去や時代であっても、新鮮に問い直せもする。声の中から新たに大事なものを汲み取り、それを伝える言葉を探すのに適した道具でありながら、質問と回答の繰り返しから過去の解釈を再考できるのもインタビューだと著者は考える。

 かつては成功者や有名人といわれる層に行われることが多かったインタビュー。著者は、暴力や時代の矛盾のようなものにさらされ、「沈黙せざるをえない人たち」の内面の世界を探ることに、この手法による取材の可能性を感じている。見えにくい形で日常的に存在し続ける暴力的なものが、語りの流れによって自然に示されていくからだ。

 真摯にインタビューと向き合ってきた著者による、静かな情熱とともに深い思いが綴られた本書。インタビューの新たな役割や可能性に踏み込んだ読み応えのある作品は、インタビュアーを目指す人にはもちろんのこと、何かを言葉にして発信する人にもおすすめの一冊である。

文=三井結木