『魔法使いの嫁』となった少女は、世界の美しさを知る…少女と異形の絆を描いたおすすめ漫画

アニメ・マンガ

2018/12/16

 ディズニー映画で有名な『美女と野獣』をはじめとして、少女と異形の交流というのは、古くから多くの人に好まれてきたテーマといえるでしょう。アニメ化もされ、多くの人気を集める『魔法使いの嫁』は、一見すると悪魔のようにしか見えない姿をした人外の魔法使いと、希望を失った少女が出会うことによって、少女が成長していく物語。

 本稿では、そんな少女たちが異形の存在との交流を通してその本質を知り、絆を深めていく漫画を紹介しましょう。

■自分に価値を見いだせなかった少女は、異形の魔法使いと共に力強く成長していく

 特別な力を持っていながら、その反面、多くのものが欠けた存在であるふたりが出会い、一歩一歩成長していく姿を描いた『魔法使いの嫁』(ヤマザキコレ/マッグガーデン)。

 魔術の香り漂うイギリスを舞台にしたこちらの作品は、魔術や魔法、妖精やドラゴンといった存在が現実の世界と重なるように隠れ住んでいるという、ハリーポッター的な世界観を持っています。イギリスの風や匂い、そして古くから伝わる伝統と神秘を感じさせてくれるだけでなく、少女と魔法使いの両者が、さまざまな体験を通して、成長して変化していく姿を丹念に描いています。まさに、ファンタジーと恋愛、そして少女の成長が見事に融合された作品です。

■その獣が求めていたのは、自分を殺してくれる天使

 人間と亜人が存在する世界において、兵器として幼い頃から育てられた亜人は、圧倒的な戦闘力を持っていながら、それ以外のことはほとんど知らず、唯一の望みは1冊の絵本に描かれていた、死へと誘ってくれる天使に出会うこと。

 そんな「死を望む獣」と、自らの家族を皆殺しにされたひとりの少女がであったことで、奇妙な旅がはじまります。生き延びるために、親の敵といえる亜人から生き残る術と戦う力を学ぶ少女と、少女を育て、自分を殺して貰うことを目的とする亜人。そんな2人の旅の結末は? 果たして少女は亜人の願いを聞き届けるのか? 『ライラと死にたがりの獣』(斯波浅人:原作、斉田えじわ:作画/KADOKAWA)は最後まで一気読み確実の作品です。

■怪物しかいない国へと捨てられた少女の運命は?

 まるで絵本のようなモノトーンの描写が特徴的な『とつくにの少女』(ながべ/マッグガーデン)は、その絵柄にふさわしく、淡々と進んでいく話の裏側に、どこか緊張感や重苦しさを感じさせる独特の雰囲気が特徴的な作品。触ってしまうと呪われてしまい、自らも同じ姿になってしまうという怪物の正体はいったいなんなのか?

 そして、少女はなぜ、そんな怪物しかいない世界へと捨てられてしまったのか? 多くの謎が秘められた世界で、怪物である「せんせ」と少女はたった2人で過ごしていきます。ほのぼのとした日常生活と、その裏で逃れようもなく進んでいく世界の動き…、独特の絵柄と内容のために人を選ぶ作品ではありますが、興味を持った方はまず読んでみて下さい。

■異形の存在と仲良く楽しく暮らすのもありじゃない?

 異形と少女というと、ほとんどの場合異形は男性になりますし、異類婚姻譚の基本としてあまり幸せにはならなそうなストーリーが多いのですが、『わたしのご主人様は人間じゃない気がする』(高崎ゆうき/KADOKAWA・メディアファクトリー)は、珍しく少女と女性の異形が主人公となった作品。

 ちょっと口が悪いメイドである少女のご主人様は、どこからどうみても人間ではない異形の存在です。外見は怖くても生活能力皆無で、なおかつ、憎めないキャラというギャップを持ったご主人様と、そんなご主人様に時にはおびえながらも、認めて貰って頭を撫でられることに幸せを感じる少女のやりとりはなんだか微笑ましく、異形と少女がでてくる作品でありながらも、ドキドキせずに読める希有なものです。

■異形が席巻する世界で少女はゴーレムと親子になった

 異形の存在といえば、一般的には人間よりも圧倒的に少ないマイノリティとして描写されることが多いのですが、『ソマリと森の神様』(暮石ヤコ/徳間書店)は、まったく反対で異形によって地上が席巻され、人間は放逐された末、絶滅危惧種になっているという世界が舞台です。

 さまざまな異形が存在する世界において、人間の少女が出会ったのは森の守護神であるゴーレム。そんなゴーレムを父親として2人は旅に出ます。異形が支配する世界ならではの特色あるさまざまな土地を巡る旅路は、ファンタジー作品として良質であり、そこで2人がどんな体験をするのか、次はどんな土地を訪れるのかと、わくわくさせてくれること請け合いです。

 異形と少女、相容れない存在だからこその悲劇を予感させる一方で、まったく違う存在だからこそ、本当の意味で、その人が持つ真実の姿や心情が描き出されるようにも感じます。本稿で紹介した作品は、恋愛関係であれ、親子関係であれ、なかなか描写することが難しいピュアで本質的な感情が伝わるものばかりですので、異形だからと恐れずにまずはご一読下さい。

文=龍音堂