『週刊文春WOMAN』創刊5周年&『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』刊行記念! 内田也哉子さん×小泉今日子さんの貴重なトークイベントが開催

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/1/26

内田也哉子さん、小泉今日子さん
写真提供/文藝春秋

 2024年1月22日、東京・新宿紀伊國屋ホールにて、『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(文藝春秋)を刊行した内田也哉子さんと、ゲストの小泉今日子さんのトークイベントが開催された。テーマは「人生に訪れる喪失と、人と出会うことについて」。内田さんの両親・樹木希林さんと内田裕也さん、さらには夫の本木雅弘さんとも親しい小泉さんとの対話は、とても親密で温かいものだった。チケットがソールドアウトした注目イベントをダイジェストでご紹介する。

出会いは19歳と29歳

『週刊文春WOMAN』創刊5周年記念でもある今回のイベント。満席の会場は女性が多いかと思いきや、男性も多く年齢層もバラバラ。ふたりがにこやかに可憐に登壇すると、会場全体が「パッ」と明るくなるようだった。

 司会役の『週刊文春WOMAN』編集長によれば、今回の対談は内田さんから小泉さんへのラブコールから実現したとのこと。小泉さんはアイドル時代に「花の82年組」として内田さんの夫・本木さんと仲良しの同期であり、トークはまず内田さんと小泉さんの出会いの頃のお話から。ふたりが初めて会ったのは内田さんが19歳、小泉さんが29歳の時にパリで。「テレビがない家」に育った内田さんはアイドル時代の「キョンキョン」を知らず、小泉さんと一人の女性として出会えたのがむしろ良かったという。本木さんと小泉さんは「“もっと広い世界を見たい”という気持ちが共通で、面白かった映画や音楽のことを唯一話せる友だちだった」(小泉さん)とお互いをリスペクトし合う関係だったこともあって、出会いの後もポツポツと会う程度だったというが、ずっと「すごく素敵な女性」と小泉さんを思い続けていたという。

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 そんな小泉さんは内田さんの本の2人目の対話相手としても登場していて、お話はその時のことに。「それまでふたりっきりでお話をしたことがなかったから、ただ目の前に座るしかない」という小泉さんの思いに、背筋が伸びたという内田さん。希林さんもかねてから「誰に対峙しても自分の態度を変えない」小泉さんの持って生まれた才を評価していたそうで、お話はそんな小泉さんの根幹がどうやって育まれたのか、三姉妹である小泉さんの家族との関係につながっていった。

 話はそのまま「母と自分」の関係へ。実は小泉さんも2年前にお母さんを亡くしており、「母を守ってあげなきゃと思っていた」と語り、一方、内田さんは「母には甘えられなかったけれど、生きることとか、世の中の疑問を不恰好でもきちんと話してくれた」。なぜ母は父と別れなかったのか、そんな疑問も母にぶつけたこともあったが、その答えの意味もちょっとずつ理解できるようになってきたという。独特な子育てが印象的な希林さんだが、小泉さんは特に内田さんの「言葉」にその影響を感じるそうだ。

内田也哉子さん
写真提供/文藝春秋

小泉今日子さん
写真提供/文藝春秋

ゆっくりゆっくりさよならをする

 この対談のテーマにちなんで、後半には「死」という喪失についての話も。「死」の受け止め方はそれぞれだが、ふとした瞬間に故人を思い出すことはあって「ゆっくりゆっくりさよならをするのよね」(小泉さん)とふたりで頷き合う。「遺品整理ができない」という内田さんは、本で対談した写真家・石内都さんに「整理したくなった時がその時だから」と言われたそうだが、「うちのユミさん(母)は、ものを捨てないタイプだったので、迷いもなく捨てました」と小泉さん。「スパッツだけで60着くらいあったの!」(小泉さん)「父の部屋の3段チェストは全部赤い靴下だった」(内田さん)と、故人のエピソードが会場の笑いを誘う一幕も。

 さらに話題は、もうひとつのテーマである「出会い」についても。本木さんによれば「現場で小泉さんは端っこにひとりでいる人にさりげなく声をかける」そうだが、小泉さん的には周りに無理して合わせるより「仲間になれそうな人があそこにいるな」と声をかけていただけとのこと。気が合えばそのまま長い付き合いになることもあり、実際に小泉さんの友人が多種多様で、そんな小泉さんに「どうやって人と繋がれるのか」「気張らない関係性を他者と築くコツ」を真剣に質問する内田さんが微笑ましかった。さらに「他者との共同生活はもうあまり興味がない?」と突っ込む内田さんに、「もともと無理みたい(笑)。猫ちゃんで勉強中」と小泉さんは笑顔で答えた。

内田也哉子さん、小泉今日子さん
写真提供/文藝春秋

 最後は「利他的」という大きなテーマについて。子育てもひと段落して「これからはもう少し社会に目を向けたい」という内田さんは、谷川俊太郎さんに「大きな視野で小さなことをするということだね」と言われたそう。小泉さんも現在の活動は「利他的」を大事なテーマにしているとのことで、谷川さんの言葉に大きく頷いていたのが印象的だった。

 対談終了後は事前募集した質問に答えて、小泉さんが内田さんも知らない裕也さんと希林さんとのエピソードも披露。最後に一言ずつ「ついいろんなことを言いすぎてパーッと炎上することもありますが、どんなことでも話をして、人が考えるきっかけになればいいと思って覚悟して言っているので気にしてません。ご心配なく(笑)」(小泉さん)、「本に登場してくれた方々は、広い荒野にひとりぼっちですっくと立っている人たち。母が『人は生まれてから死ぬまでずっと孤独』って言うのを寂しく感じていましたが、ひとりで立っていられる清々しさをすごく教えてもらった気がします。これからは孤独を愛でられるように生きていけたら」(内田さん)とそれぞれがメッセージを残し、あたたかな発見がいっぱいのイベントは終了となった。

 なおこの貴重なイベントの模様は現在、アーカイブでも配信中(2024年2月22日まで)。ほか、2024年3月発売の『週刊文春WOMAN』でも対談の詳しい内容が紹介されるとのことで、ぜひチェックしてほしい。

▶イベントアーカイブはこちら

取材・文=荒井理恵

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