涙が止まらない! 今注目を集める”活版印刷”、川越が舞台の「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる…
『活版印刷三日月堂 海からの手紙(ポプラ文庫)』(ポプラ社) 今やパソコンとプリンターさえあれば、誰でも印刷物を作れる時代。しかし、かつては鉛製の活字をひとつひとつ並べ、できた版にインキをつけて紙に刷るという気の遠くなるような作業を行っていた。実は今、こうした印刷技術「活版印刷」が注目を集めている。“データ”ではない、実体のある活字ならではの手触り、刷り上がった印刷物の端正なたたずまいが、若い人にとっては逆に新鮮に感じられるのかもしれない。
ほしおさなえさんの『活版印刷三日月堂(ポプラ文庫)』(ポプラ社)は、そんな活版印刷をモチーフにした連作短編集だ。昨年6月に発売された第一作はじわじわと人気を広げ、静岡書店大賞を受賞するなど静かな話題に。続く第二作『活版印刷三日月堂 海からの手紙(ポプラ文庫)』(ポプラ社)も、大きな注目を集めている。
物語の中心にあるのは、川越の路地裏にたたずむ「三日月堂」。祖父母の代で閉店したが、最近になって28歳の孫娘・弓子さんが受け継ぎ、ひっそりと営業を再開した活版印刷所だ。とはいえ、今はまだ大型印刷機は動かせず、稼働してい…