「顧客満足度90%」って本当にスゴイのか? 印象的な数字だけで物事を判断しないためのコツ

ビジネス

公開日:2023/3/3

数字にだまされない本
数字にだまされない本』(深沢真太郎/日経BP 日本経済新聞出版)

「顧客満足度90%のサプリメント! 有効成分1000mg配合で、5秒に1個売れてます!」

 サプリメントを探しているとき、こんな広告を見たら、アナタはどう感じるだろう。 私なら「良いものに違いない」と思ってしまう。「90%」「1000mg」「5秒に1個」など具体的な数字がたくさん入っているからだ。

 だが、私のように感じる人は、少し気を付けた方がいいかもしれない。そう教えてくれるのが、『数字にだまされない本』(深沢真太郎/日経BP 日本経済新聞出版)。良く見える数字にはカラクリが隠されている場合があることを紹介しよう。

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数字から受け取る「思い込み」

 人は無意識のうちに、数字は物事を正確に表していると思いがち。数字や計算に苦手意識のある人なら、なおさらだ。そのうえ、人には「すごい数字」を信じたいという性質もある。この2つが組み合わさって、私たちは見た目だけの数字の印象を「真に受けてしまう」のだ。

 例えば、栄養ドリンクなどの宣伝で見かける「○○○を1000mg配合」というフレーズ。これは「○○○を1g配合」と言い換えることができる。どうだろう、量は変わらないのに、魅力が半減した気がしないだろうか。宣伝する側は決してだまそうとしているわけではない。より購入者の印象に残る表現を選んでいるだけだ。

「1000」という数字だけで「すごい!」と思ってしまってはいないだろうか。大事なのは、1gの○○○がどんな効果を与えてくれるかということ。正しく数字を読み取り、それから訴えていることの本質を見極めることが大切なのだ。

その数字の「定義」を確認しよう

「顧客満足度90%」と言われると、多くの人が満足していると感じる。しかし、その判断はまだ早い。なぜなら、この文章だけでは、どのような条件でこの数字を出したのか、という“定義”が不明だからだ。

 例えば、「10人中9人」「1億人中の9000万人」いずれも割合は90%だ。だが、「1億人中の9000万人」の方がスゴイのは言うまでもない。さらに、どんな人に聞いたアンケートなのかも重要だ。商品のファン10人と、使ったことがある全ての人の中からランダムで選ばれた10人の答え。後者の意見の方が参考になりそうだ。

「数字で判断させる」には2つのパターンがあるという。1つは、数字そのものがウソである場合。これは悪質であり、違法性も高いため、日常ではほぼありえない。もう1つのパターンは、その数字を出した定義を説明していないことだ。

 要するに気を付けるべきは、定義がわからない数字はすぐ信じないこと。数字に苦手意識がある人は「この数字の定義を教えてください」というキラーワードを覚えておこう。

隠れた数字を見つける「思考の方向」

「広告を見た80%の人が製品を購入している」というデータがある。一見すると、「この広告スゴイ!」と思いたくなるもの。だが、もし、広告を見ていなくても85%の購入率があった、としたらどうだろう。広告は不要だと判断され、次の企画はなくなってしまうかもしれない。

 新しい広告を打ち出したいときはどうするだろう。そう、広告を見ていない場合の数字を明かさないようにすればいい。つまりデータの選別だ。これを逆手に考えてみよう。短絡的に判断しないために、数字を見たとき「何か見えていないことがあるのでは」と推察してみることだ。

 コツは、「思考の方向」を意識すること。90%満足という数字を見たら、10%に注目する。広告を見た80%が購入したなら、残りの20%について考える。提示された数字に対して「逆は?」「その一方で?」と自分に問いかけることで、数字に流されることなく判断できるようになるのだ。

 著者の深沢真太郎氏は、「数字はコトバである」と語る。コトバが曖昧なままでは、正しく意思疎通できない。数字を怖がらず、コミュニケーションを始めようという気持ちで向き合うことが大切だという。

 本書には、上述した数字に対する考え方のほかに、グラフの使い方や読み方、2×2マトリクスという表を使ったデータ整理法など、実践的なテクニックも紹介されている。数字が苦手だ、という人こそ読んでみてほしい。

文=冴島友貴

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