人気ミステリ作家集結! すべて新作、オール読み切り

小説・エッセイ

2014/3/3

宝石 ザ ミステリー 〈3〉 ― 電子特別版

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:小説宝石編集部 価格:864円

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 今をときめく人気ミステリ作家による、オール新作のアンソロジーの3巻目である。紙では毎年年末の恒例だが、いずれもやや遅れて電子化されており、こちらは少し遅いお年玉と言ったところか。執筆陣は、湊かなえ、今野敏、東川篤哉、誉田哲也、笹本稜平、若竹七海、小杉健治、長岡弘樹、石持浅海、深水黎一郎、深町秋生、大山誠一郎、川崎草志、そして長沢樹の14名。さあ、どこから読む?

 注目は巻頭を飾る湊かなえ。「ベストフレンド」は、シナリオコンテストの優秀賞をとった女性が主人公。大賞受賞作より自分のものの方が出来がいいと思った主人公は、大賞受賞者を祝い励ますふりをしながらも腹の中は煮えたぎっていた──。人間の持つ嫉妬の描写は著者の得意技だが、それだけではない。切れ味抜群のラストの捻りには驚かされること間違いなしだ。

 お馴染みのシリーズ物も多い。誉田哲也「お裾分け」は姫川玲子、若竹七海「幸せの家」は葉崎市、東川篤哉「倉持和哉の二つのアリバイ」は烏賊川市、深水黎一郎「父と子──ピーター・ブリューゲル殺人事件」は神泉寺瞬一郎&大癋見(おおべしみ)警部、大山誠一郎「赤い十字架」は和戸刑事など。深町秋生「白い崩壊」には『宝石ザ・ミステリー2』に続いて椎名留美が登場する。

 どれもファンには嬉しいが、特に誉田哲也の「お裾分け」は、シリーズ読者は逃してはいけない。姫川班が解体され玲子が池袋署に異動になったあと、再度本部に異動する直前の話なのだ。また、長沢樹「少しだけ思う、あなたを」はシリーズというよりスピンオフ。ヒロイン真下霧生は、著者の長編『夏色パースペクティブ』に登場する高校生・遊佐渉の母である。この話では、渉は小学校に入ったばかり(名前だけで作中に直接は登場しない)。

 石持浅海「ナナカマド」はちょっと不思議な〈日常の謎〉のように始まるが、最後は思わぬ展開に。長岡弘樹「白秋の道標」の衝撃的にして重みのあるラストも印象的。川崎草志「署長・田中健一の憂鬱」は著者の長編とはまったく趣の違うユーモアミステリ。そしてベテラン小杉健治の「退職刑事」は、故・都筑道夫へのオマージュだろうか。現役警察官が退職刑事である叔父に事件の話をすると、その叔父があるヒントを出す。ただ都筑作品のようにその場で謎解きをするのではなく、こちらはあくまで捜査小説だ。

 大トリはドラマ「隠蔽捜査」が人気の今野敏による「暁光」だ。警察の機動捜査隊に配属されたベテラン刑事・縞長。刑事歴は長いが機捜の経験は浅く、コンビを組む〈俺〉は扱いに迷っていた。が、実はこの縞長には驚くべき能力があって──というもので、課の中の人間関係の描写はさすが「安積班」シリーズの作者。しかも終盤の展開は実に爽快で、掉尾を飾るにふさわしい短編である。

 なお、何が電子〈特別〉版かというと、実は紙の方に収録されている東野圭吾の短編が、電子版には入ってないのである。東野ファンには残念だが、その分、お安くなっているという次第。お目当ての作家がピンポイントで他にいる、という向きにはこちらの方がお得かも。


収録作の目次はこんな感じ。タイトルのタップで本文に飛べる

各短編の冒頭には著者紹介を掲載