「電車で近くに女性がいると、触りたくなってしまう」オトコたちの性の悩みはどう解決する?

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公開日:2018/6/17

『男性は何をどう悩むのか 男性専用相談窓口から見る心理と支援』(濱田智崇・『男』悩みのホットライン:編/ミネルヴァ書房)

「自分のペニスは人より小さい?」「包茎で恥ずかしい」「自分は変態なのかもしれない」というさまざまなオトコたちの悩み。普段ならば軽はずみな猥談や下ネタとして済まされがちな話題だが、実はこのような悩みは、当事者の男性にとっては周囲の想像以上に深刻なものでもある。

『男性は何をどう悩むのか 男性専用相談窓口から見る心理と支援』(濱田智崇・『男』悩みのホットライン:編/ミネルヴァ書房)は、1995年に日本初の男性相談窓口「『男』悩みのホットライン」を開設した著者たちが、長年のカウンセリングで蓄積された経験と調査データに基づいて「男性」特有の悩みをまとめた本だ。

 本稿ではこの書籍のデータと解説に基づいて、普段あまり触れられることのない男性が抱える「性」の悩みについて探っていきたい。

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■男は「性」に関する悩みを打ち明けにくい

『男』悩みのホットラインにこれまで寄せられた相談内容のうち、実に42.6%が「性に関する悩み」だったという。2番目に多い「自分の性格・生き方に関する悩み」が14.9%であることと比べると、かなり多くの男性が、おそらくそれまで1人で抱えていた性に関する悩みを電話相談で打ち明けたことになる。

 なぜ男性は性に関する悩みを抱え込むのかという問題について、本書は以下のように分析する。

「男らしさ」の文化の中では、性的なことを語るのはいわゆる「猥談」や「自慢話」くらいしか許されてこなかったのではないでしょうか。男性が性のことで悩んでも、他人に(たとえ男同士でも)語るのは恥とされ、性に関する悩みを持つこと自体が恥とされるような価値観がまかり通ってきたようにも思われます。

本書76頁

■性器の大きさ・形、包茎、勃起障害の悩み

 ペニスの大きさや形、あるいは包茎であることなどを、誰にも相談できないまま1人で悩み続け、ホットラインに電話をかけてくる男性は少なくなく、思春期や青年期の若い世代はもちろんのこと、幅広い世代から相談が寄せられているという。インターネットやメディアからの情報、他者からの指摘によって相談を決心する人が多いようだ。

男性器は「強く、たくましく」という、まさに「男らしさ」のシンボルとして世間にとらえられています。そのシンボルの傷つきや、揺らぎというのはまさに男性にとっての一大事と言えます。

本書77頁

 このような価値観のもとでは、「勃起」と「男らしさ」を切り離すことが困難であることは容易に想像できる。それゆえに「勃起障害(ED)」は「男らしさの喪失」として象徴的な出来事の一端となるのだ。

■「電車で近くに女性がいると、触りたくなってしまう」――性嗜好の悩み

 性嗜好に関する相談では、それを実行すると犯罪になるような内容が語られることも多いという。例えば「ダメだと分かっていて、現にしたことはないが、近くに女性がいるとつい触りたくなってしまう」といったような衝動。世間からすると笑い話で済まされてしまうような内容に見えるかもしれないが、悩みを抱えている本人にとっては深刻な問題だ。

 性的な嗜好の場合、倫理上の論理を伝えるだけでは解決しない場合も多いという。そういった場合には、合法的かつ現実的な選択肢(具体的には、合法的な性風俗店を利用することなど)を提示することで、相談者が社会的に逸脱してしまうことを抑制するよう働きかける方が効果的な場合もあると本書は指摘する。

 男女平等が進む中、社会的な視点で女性の悩みに耳が傾けられる機会は増えてきたが、男性の場合は悩みを打ち明けられる場所や機会が少ないという現実がある。何だかんだ言ってもまだ「男らしさ」が重要視されるこの社会では、男性が抱え込む「性」の悩みはなかなか解消しがたいようだ。

文=K(稲)