なるべく働きたくない人、この指とまれ。自分のお金を見直すための教科書

ビジネス

公開日:2018/8/13

『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(大原扁理/百万年書房)

 給料日はハッピーな気分だけど、給料日直前はお金が足りなくてイライラ…。生活をラクにするために働いているはずなのに、いつまで経っても幸せになれないような気がする…。そんな風に感じている人は、お金に過剰依存してしまっているかもしれません。お金は確かに大事なもの。でも、お金に振り回される生活がハッピーと言えるでしょうか? 今の仕事や将来に不安を抱える人に、そんな問いかけとやさしい答えを提案するのが、『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(大原扁理/百万年書房)です。

 本書は、著書本人が25歳から6年間続けた週休5日の低収入生活から得たという、「お金と人生の考え方」をまとめた1冊。お金ですべて解決できるという風潮に逆行する生活を提案することで、本当の豊かさに気づけばもっとラクに生きられるのでは、という考え方が生まれたといいます。

■低収入生活のルールを常にアップデートしていく

 大原さんの低収入生活は、家賃を払うためだけに働いているような状況に嫌気がさし、郊外の激安アパートに引っ越したところから始まったそう。その暮らしの中で、お金は「漠然といっぱいあればいいもの」ではなく、「自分がハッピーに生きていくために必要なもの」だという位置づけができあがったといいます。

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 低収入ということは、使えるお金も少ない。さぞ不自由なのではと考えてしまいます。ところが大原さんは、お金を使わずに楽しみを見つける方法を身につけたことで、むしろ毎日ハッピーだったと綴っています。たとえば、朝食用に自分で生地から作ったスコーンは、1食10円くらいで済む上に、作っている間も楽しい。それをラッピングして人にプレゼントすれば、きっと喜ばれる。あるいは、海外旅行に行くお金がなくても、半径500メートル圏内にもまだ行ったことのない場所はたくさんある。それを見つけて、頭の中の地図を書き換えていくのは楽しい作業だ。
 
 その一方で、スコーンを作る代わりにパンを買ったらそれはそれで美味しいし、近所ではなく足を伸ばして温泉にでも行けば、これもまた楽しい。つまり、お金があろうとなかろうと、使う目的や状況によって判断すれば、どこでも楽しみを見つけられる。自分の中にきちんとした軸があれば、お金によって不自由な思いをすることはないのだ。

 また、一度できあがったお金のルールやルーティンを、「以前ほど効果が上がらないな」と感じたり、「より理想にかなうものを見つけた!」と思ったりした時にアップデートすることが大切だという。読書や周りからの情報を通して、他人の人生から新しいヒントを得て実生活のどこかに取り入れていく、ということを地道に続けると、ただ頑なに我慢をするよりもストレスのない、常に最適化されたオリジナルな生活が整っていくといいます。これらは、収入状況に関係なくどんな人でもすぐ取り入れられるアイデアではないでしょうか。

■「自分がこうありたい」と考えて過ごす積極的な毎日を手に入れてほしい

 大原さんが激安住宅に引っ越した時点では、お金についてどうすればいいのか、まだ具体的な考えがあったわけではないそうです。生活のヒントになればと、節約や年収アップの関連本を読んだこともありましたが、いくらお金の本を読破したところで、「自分がどう生きていきたいか」ということがわかっていない限り、役立てようがないということに気づいたそう。そこから自分と向き合い、実現したい暮らしのために必要な労働や消費をクリアにしていったといいます。

 低収入生活というと、貯金や保険、老後の生活について疑問や不安に思うこともありますが、そういった身の周りのお金問題についても、大原さんの価値観に基づいた納得のいく考えや生活術が数々紹介されています。でも、大原さんは、「低所得であること」を第一にすすめているわけではありません。「不景気だから」とか「親に言われたから」とか、誰かや時代のせいにする消極的な生活ではなく、「自分がこうありたい」という積極的な態度で過ごす毎日を手に入れてほしい、と語っています。そのことに気づくのはなるだけ早いうちがいいとも触れています。

 他人に干渉しすぎず、されすぎず。とはいえ、必要なお金や大切な人とはしっかり繋がっていく。その暮らしぶりは、無駄がなく清々しいもの。読み終えて、「豊かな生活って何だろう?」と自分に問いかけずにはいられません。大原さんは、生活するためだけに稼ぐことをやめ、最低限必要なお金を割り出し、その中で気楽に豊かな生活をすることを見つけました。さて、あなたはどうしますか?

文=吉田有希