授業中に前の席で声を殺して泣く女の子。イライラした僕は、無言でトイレに向かい…【バケツの水】/意味がわかると鳥肌が立つ話⑤

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/23

意味がわかると鳥肌が立つ話』(蔵間サキ:編著、toai:絵/Gakken)第5回【全13回】

累計460万部を突破した「5分後に意外な結末」の公式ライバルシリーズ「5分後の隣のシリーズ」より、『意味がわかると鳥肌が立つ話』をお届け。一見何気ない物語のようだけど、意味がわかると、その意外な展開に思わずゾワっと鳥肌が…。怖いだけではなく、感動や笑いなど、さまざまなタイプのショートストーリーを収録。読み進めるうちにどんどんはまっていく……「鳥肌」エピソードをお楽しみください。

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

【30日間無料】Amazonの読み放題をチェック >


意味がわかると鳥肌が立つ話
『意味がわかると鳥肌が立つ話』(蔵間サキ:編著、toai:絵/Gakken)

バケツの水

 今でもはっきり覚えている。小学5年生の時のことだ。

 授業中に、前の席の女の子がすすり泣いて身体を小さく震わせていた。その様子を見て、僕はイライラした。

 さっと立ち上がって、無言で廊下へ出る。

 先生が注意してきたけど、そんなことは関係ない。怒って追いかけてくる先生を無視して、トイレに向かう。そして掃除用のバケツに水をくんで戻り、その水を頭から女の子にぶっかけた。

「どうして、そんなことするの!?」

 先生が叫び、教室中が大騒ぎになった。

 女の子は保健室へ。僕は職員室へ。

 なぜそんなことをしたのか問いつめられたけど、僕は話したくなかった。

 僕が何も言わないから、僕と女の子の両親が学校に呼び出された。

 僕の両親は、女の子と彼女の両親にひたすら謝って、そして僕を怒鳴りつけた。

 家に帰ってから、僕はまた両親にしかられた。そればかりか、父さんにはぶん殴られたけど、僕は殴られた痛みをガマンするしかなかった。

 

 あれから十年以上経った。

 僕は、あのときの女の子と結婚し、幸せに暮らしている。

本作品をAmazon(電子)で読む >

本作品をebookjapanで読む >

あわせて読みたい