つぶやきシローの青空読書『放浪記』を読んだよ
更新日:2013/12/20
『放浪記』林芙美子
第一次大戦後の東京で、飢えや貧困、屈辱に耐えながらもしたたかに生き抜いた作家・林芙美子の代表作。職を変え、住む場所を変えても貧乏から抜け出せないひもじい日々に、自分を棄てた男への想いや、詩を書いて生計を立てていきたいという夢…。ありのままの思いを軽快な文体で綴ったこの「放浪記」は1930年にベストセラーに。以後、一躍スターダムにのし上がった女流作家・芙美子の自叙伝的日記である。
この「放浪記」は、作者・林芙美子の日記なんだよね。日記って本来カギをかけたりして人に見られないよう隠しておきたいものでしょ? こんなに多くの人に自分の日記を読まれたのは、アンネ・フランクと芙美子くらいじゃないかな。僕なら恥ずかしくて絶対イヤだね。
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芙美子はとにかくお金がなくて、惨めでひもじい思いをしているわけよ。この作品って誰かに読ませるために書いた“外向き”の文章じゃないから、人間の欲望や感情がありありと表れてるんだよね。恋愛に、お金に、食べ物に…、時代は違うけど芙美子の考えていたことって今の女性とそんなに変わらないんじゃないかな?
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読んでいくうちに段々と、芙美子の性格や周りの人のことを分かっていくんだよね。男にすがろうとしては裏切られ、久しぶりに元恋人に会ってやけぼっくりに火がついちゃったり、金銭トラブルで別れたり…、男性に振り回されっぱなしの「男性放浪記」って感じ。芙美子は今で言うだめんず好きだったのよ。
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あとね、お金の記述が多いところも女性らしいよね。「焼き鳥一串二銭」とか、「毛布は二十銭、お菓子は十銭」とか細か過ぎて生々しいの。銭って今の僕には理解できない単位だし、家計簿かってくらい細かく計算しているのが女性らしいなぁ〜と思ったね。
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そして何よりもこの作品のなかで生き生きとしているのが、食べ物に対する記述。いつも「アレ食べたいなぁ、コレ食べたいなぁ」って食べることばっかり考えてて、それがほんとに可愛らしいんだよね。肉の誘惑に負けて好きでもない男を家に入れたりしちゃうのよ。今でも女の子って食べ物の写真をブログとかツイッターにアップしたりするでしょ。女の子っていつの時代も食べるのが大好きなんだね。
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