つぶやきシローの青空読書『放浪記』を読んだよ

更新日:2013/12/20

つぶやきマーカー

「太宰治もそうだけど、林芙美子もモテてたんだろうね」

芙美子のことを好いてくれる人だっているのに、その人の優しさには甘えられないのよね。それよりも付き合うと苦労が多そうなだめんずに引き寄せられちゃうの。安定より刺激を求める、情熱的で恋多き女なのよ。もし芙美子がフラれっぱなしのモテない人生だったら、この日記は公にできなかったんじゃない? それにしても昔の文豪って恋愛自慢的な話が多いから、モテてたんだろうね。

「明るくていじらしい言葉で、貧乏で辛い日々を軽快に語ってるんだよね」

貧乏な生活を淡々と綴っているんだけど全体的に暗く重々しくないのは、芙美子独特の言葉の使い方と、間に出てくる瑞々しい詩のおかげなのよ。「何ひとつ楽しいことなんかない」っていうつら〜い貧乏人生なのにハツラツと生きている。いつか作家になりたいという芯の通った強い思いと才能があったからなんだよね。

「僕にとってのご馳走は、カップ麺にかきあげだね」

食べ物のことを語る時は本当にイキイキとしていて、読んでいて思わず腹が鳴るくらいリアルなのよ。ちなみに僕が売れない時代からよく食べていた些細なご馳走ご飯は、総菜屋で売っている野菜のかき揚げを乗せたカップ麺。今は刺身とか肉とか自由に食べられるけど、当時はやっぱり肉が食べたかったもんなぁ。そんな貧乏時代をふと思い出して懐かしくなったね。

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「で、最後まで食べものの話かよ!ってズッコケそうになったよね」

一日の終わりに何の脈絡もなく、「腹巻き買いたし」とか突然書いてあったりするのが日記らしくていいんだよね。それで、この作品の終盤って結構シリアスなこと書いてあるのに「晩は寿司にしよう」で最後を締めてるのよ。え〜そこで終わるのかよってビックリしちゃったよね。芙美子のこれからの人生が豊かで幸せなものであることを予見してるのか、これも気持ちのいい終わり方なんだけどね。

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「イカと醤油」

愛情表現が不器用な父と、父を誰よりも尊敬し貧しい生活をも明るく楽しく過ごす息子・健太の物語。不足した日常は彼らにとって不幸ではない。しかし、健太が小学校に入学する頃、突然二人の生活に終わりが訪れる。理想な親子とは?つぶやきシローがその問いを投げかける。

僕が思う理想の親子を書いてみました。
こういう父親、こういう息子が今の時代もいてもいいんじゃないかって思います。