メルカリ問題発言、ダウンロード違法化…本を巡る議論続く

社会

2019/3/12

■「新しい本を借りるように読む」の問題点

 メルカリが2月20日にスマートフォン決済サービス「メルペイ」を発表した。この発表会でのメルペイ青柳直樹代表の発言が物議を醸している。

「新しい本を『借りるようにして読む』という、メルカリとメルペイならではの体験を届けられる」

 経済評論家の勝間和代氏はブログで、「大変不愉快。今後メルカリは一切使用しない」と宣言している。

 何が問題なのだろうか?

 当然ながら本は書店で支払いを済ませてから読み、読み終わった後は古書店へ売り払う(譲渡する)ことができる。譲渡後、古書として流通する本の売上は著者に還元されることはない。

 勝間氏が問題視したのは、オンラインでの個人間の古書流通がメルカリによって「推奨」されたように受け止めたためだ。これまで古書は、古書店を介した新刊とは異なる場で流通し、読者層も異なっていた。

 しかし、月間1000万人以上のアクティブユーザーを擁する国内最大級のプラットフォームであるメルカリが、個人間古書流通を押し進めるのであれば、事情は異なってくる。ただでさえ、書籍のビジネスモデルが厳しい状況にある中、著者に還元のない流通が拡がってしまうと、結果的に良い本が生まれる土台が崩れてしまう。

 もう1つのポイントはメルペイが「後払い」であるという点だ。現在展開中の「メルカリ月イチ払い」を拡張する意向を示しており、メルカリでの取引実績をもとに信用情報を蓄積し、たとえメルペイの残高がなくても、オンライン/実店舗での購入を可能にするという。

 これに対して強い懸念を示したのが、小説家の藤井太洋氏だ。

「取り込み詐欺」を推奨するのか? という厳しい表現を用いての批判だが、たしかにメルペイの後払いの仕組みを使えば、手元に本(商品)がなく、当たり前だが読み終えてさえいなくとも、注文があった時点で、それこそAmazonで新刊を買うのではなくメルカリから古書を仕入れて利益を乗せて販売できれば商売だって成立してしまう。

 連続するツイートで藤井氏が指摘するように、クレジットカードのような後払いの仕組みでは、こういった行為は完全には防ぎきれない。またメルカリではAIも活用しながら、不正な取引への監視は強化している。しかし、運営者自身が転売やいわゆる「せどり」行為を推奨するかような発言をしては、「メルカリはフリーライド(ただ乗り)の場」であると宣言しているとみられてもしかたがない。勝間氏や藤井氏らの批判にメルカリは真摯に向き合う必要があるだろう。

■止まらない「誰も得をしない違法化」

 そして、もう1つまさに現在進行中の議論は「ダウンロード違法化」だ。前回の記事で日本マンガ学会からの反対声明を紹介したが、今度は出版社の代表からも行き過ぎへの懸念が示された。

 発言したのは、講談社の野間省伸社長。2月21日の決算発表会で「海賊版サイトは撲滅したい、しかし表現の自由を侵したり、著作権者の意欲を萎縮させることには反対。ダウンロードの違法化の範囲は悪質な電子書籍のダウンロードに制限すべきだ」という考えを示したのだ。

 現在、文化庁からは有識者会議での異論を押し切る形で、インターネット上に違法にアップロードされたマンガや写真などのあらゆるコンテンツを対象に、著作権侵害であることを知りながらダウンロードを行った場合、全面的に違法とする方針が示され、自民党はこれを了承、今国会での審議が始まろうとしている。(※2月27日執筆時)

 マンガ家やクリエイター、研究者からも反対の声が強いダウンロード違法化だが、果たしてその声は瀬戸際で国会に届くだろうか? 私たち一人一人が関心を示し、様々な形で表明していくことがこの流れを食い止める助けとなるはずだ。

文=まつもとあつし