メルロ=ポンティ 可逆性 (講談社学術文庫)
メルロ=ポンティ 可逆性 (講談社学術文庫) / 感想・レビュー
ころこ
読ませる文章を書くという観点では、シリーズ中で著者は傑出しています。著者の導入がメルロ=ポンティと地続きになっていて入り易いともいえますが、他方で学術的な難しさも十分にあり、いつの間にか絡み合いというか、沼の感触に溺れることになります。粘り強く読んでいかないと読み通せない本でした。前期は構造研究と〈身体〉、中期はスティル論と偏差論、後期は〈肉〉の存在論と分かり易く3期分け、それぞれに〈構成〉の現象学から〈制度化〉の現象学への転位、〈両義性〉の思想から〈可逆性〉への思想の転回、〈身体〉から〈肉〉の思想の身体
2022/05/19
ゆきだるま
世界は身体を介して繋がっている(五感を通し)。私の中では、自分も世界も他者も繋がっていて行き来しているイメージ。そしてものをみる(認識する)とは同時にものにみられる、つまり主たる視点はなく、可逆的なのだと。またその捉え方、捉われ方にはスティル、つまり人や社会それぞれのやり方がある、といった感じだろうか。そしてやりとりするごとに変移していく、つまり、ものは固定じゃないのだと。また、茫漠な世界のごく一部でそのやりとりがなされてて、それは言葉によってものが取り出されてる感じかな。(だけど言葉も固定じゃない)
2022/01/02
またの名
文体またはスティルについて:「たとえば言語表現や絵画表現をモデルにとりあげてみると、テクストや画面の構成要素の一つ一つは「ある特有の等価系にしたがって、ちょうど百の羅針盤の百の針のようにたった一つの偏差を示す」ようになっている。テクストや画面に散在している潜在的な意味がある共通したヴェクトルのもとに収斂させられ、そこに一つのまとまった意味空間が開かれる、といった仕組みになっている。そしてこの仕組み、より精確には、ある共通の偏差がそれにしたがって発生するところの指数を、メルロ゠ポンティは〈スティル〉と呼ぶ」
2023/06/02
tfj
メルロ=ポンティの思想の変容を構造研究と<身体>現象学の前期、スティル論と偏差論の中期、<肉>と可逆性の後期と順を追って取り上げて行く。 可逆性とは主観-客観、精神-身体などの対は「同じ生地(肉)から編まれた」絡み合ったものだという見方で、彼の哲学は第一原理の探求などではなく、それらの対が一方が他方を否定する形で「終局なき裂開の連続」として発生し続けるダイナミズムを、その只中において<生きられたまま>記述しようとする哲学である。 とにかく難解で終始容赦のない300ページ。並々ならぬ忍耐力のいる本です。
2021/09/07
うに丼
二元体の境目を溶かすようなしなやかさと強かさ 差異によって見えるようになること 規定されてしまうような、あるいは規定されてしまった感覚を思い出すこと
2023/12/09
感想・レビューをもっと見る