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心淋し川 (集英社文庫)

心淋し川 (集英社文庫)

心淋し川 (集英社文庫)

作家
西條奈加
出版社
集英社
発売日
2023-09-20
ISBN
9784087445657
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「心淋し川 (集英社文庫)」のおすすめレビュー

獰猛な執着心で息子の人生を支配する母。主人の張形に仏像を彫る妾の心情――江戸のどぶ川沿いで、醜くも懸命に生きる人々の姿を描いた物語『心淋し川』

『心淋し川』(西條奈加/集英社文庫)

 流れぬ川の水は、塵芥の堆積と共に淀み、やがて腐る。下から上へと臭い立つ腐臭は、夏の盛りにとりわけ酷く、人々の顔を歪ませる。ボウフラが湧き、大量の蚊が発生するどぶ川は、誰に愛されることもない。だが、そんな川にも名前はある。『心淋し川(うらさびしがわ)』(集英社文庫)――西條奈加氏による小説の舞台は、江戸の片隅にあるどぶ川のほとりにある心町であった。

 本書は、全六章からなる連作短編集である。うだつの上がらない両親に嫌気が差した娘が、恋人と一緒に故郷を抜け出す日を夢見る表題作。裏長屋で「四文飯屋」を営む与吾蔵が、昔の恋人の面影を持つ少女と出会う「はじめましょ」。四人の妾を囲う主人が最初に選んだ妾・“おりき”が、悪戯心から張形に仏像を彫り出す「閨仏」。淀んだ川沿いに暮らす訳ありの住人たちの生き様が綴られた本書は、人生におけるささやかな喜びと、理不尽な哀しみの双方が克明に描かれている。

 中でも、母親の歪んだ愛情を見事に描ききった「冬虫夏草」は圧巻である。日常的に長屋に響く、横柄な怒鳴り声。その声の主は、吉(きち)の息子…

2023/9/20

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心淋し川 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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しげ

北海道出身作家(河崎さん)の直木賞受賞の吉報が昨日届きました。同じく道産子で3年前に同賞受賞者した西條奈加を読書中でした。時代小説への苦手意識から西條さん初読みとなりましたが見事に先入観を覆えされた感じです。本編に描かれる心町(うらまち)は何故か幼少を過ごした昭和時代の団地住まいを思い出します。差配茂十の章で結ばれるラストはとても良かった。

2024/01/20

shinchan

西條さん初読み。ほとんど時代小説を手にしない私ですが、直木賞受賞作と言う事で読んでみました。『うらさびしがわ』と読むんですね。文庫本の表紙の絵に描かれている川は綺麗ですけどね、、、、、、、、。

2023/12/19

ダミアン4号

与吾蔵さん、良かったじゃないか!トンビが鷹ぁ?言いたい奴にゃ言わせとけ!ほら急いだ!お父っぁんの帰り、首長ぁくして待ってるぜ…江戸の片隅、流れが淀んだ心寂し川。川沿いに心町(うらまち)…そこで暮らす人々。誰でも心の中に淀んだ何かを抱えている。将来(さき)への不安、伝わらない想い、若気の至り、過ち…それらを一切合切、無かった事には出来ないけれど…ちょっとしたきっかけで淀み濁った水溜りも清い流れに変る。木枯らしが吹くこの季節。心町の人達を真似て首をすぼめてみる。こんな季節にゃ温かい食物が一番、一本つけておくれ

2023/11/17

tomoko

「うらさびしがわ」と読むんだ。江戸、千駄木の寂れた長屋で生きる人々の喜怒哀楽を綴った連作短編6話。“西條作品は厳しさと優しさでできている“という解説に同感。皆様々なものを背負い、もがき、何かを諦めている。そんな中で見出していくささやかな喜び。西條作品は「千年鬼」しか読んでいないが、同じように切ない気持ちになった。そして、この切なさはクセになるかも。

2023/11/14

タルシル📖ヨムノスキー

江戸・千駄木を流れる小さな澱んだ川、通称「心淋し川」の周りに暮らす人たちの連作短編集。各編の主人公たちは皆、なんらかの傷や後悔、不満や不安を抱えながらも必死に生きている。どんな境遇にあっても自分の居場所や生きる目的を見つけた人は強い。どの話もほろ苦さの中に少しだけ明るい明日が見えてくるのたが、下半身不随の息子を看病する母親の話〝冬虫夏草〟は、なんかちょっと変化球。一番好きなのは四文屋という飯屋の店主・与吾蔵の話〝はじめましょ〟。同じ料理屋で修行し、四文屋の初代店主・稲次が与吾蔵に語った言葉が心に沁みます。

2023/10/05

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