大名倒産 上
「大名倒産 上」のおすすめレビュー
【試し読み】笑いあり涙あり!『大名倒産』に欠かせぬ三枚目・新次郎の恋の行方は!?
『大名倒産』(上下巻)(浅田次郎/文藝春秋)【あらすじ】 足軽の子かと思いきや、お殿様ご落胤と判り、あれよあれよと大名となった小四郎、いや、越後丹生山三万石松平和泉守信房。よもやまさかの思いも冷めぬまま初登城を果たしたお殿様を待ち受けていたのは――
「御尊家には、金がない」
老中からの無情な宣告に慌てて調べてみれば、なんと御家は火の車。 「父上にお訊ねいたします。当家には金がないのですか」
「金はない。だからどうだと言うのだ」
かさみにかさみ、積もりに積もった借金にほとほと嫌気がさした先代、御隠居はこう考えた。 もはや、これまで。返済など夢のまた夢、利子支払いすらおぼつかぬ巨額の借金でしか維持できぬ御家なら維持すべきでないのだ、取り潰し結構、やってもらおうじゃないか、それまでに隠し財産貯め込めるだけ貯め込んで、当代(つまりは息子です、ひどい……)ひとりに腹を切ってもらって我らはのんびり余生を過ごそうぞ。 そうとは知らぬ若きお殿様は、幼馴染のご家来とともに金策に頭をひねる。
幕府への献上品の不渡をなんとか都合し、次なる難関は、参勤交代の費用。最…
2020/1/2
全文を読む財政状態は火の車。突如トップの座につかされたあなたならどうする?――浅田次郎『大名倒産』
『大名倒産』(浅田次郎/文藝春秋)
ちょっと想像してみてほしい。
あなたは小規模、けれども伝統ある会社の社長だ。父親が先代社長だったので後継者に選ばれた。だが、実は四男である上、愛人との間にできた庶子だったりするので、本来ならお鉢が回ってくるはずはなかった。
ところが諸事情重なって、突然有無も言わさずトップの座につかされた。しかも、蓋を開けてみたら会社の財政状態は火の車。このままでは早々に倒産である。その上、父はなにやら自分に内緒で良からぬことを企んでいる様子……。
こんな八方塞がりの状況にいきなり放り込まれたら、あなたならどうするだろうか?
浅田次郎の新刊『大名倒産』(文藝春秋)の主人公・小四郎こと越後丹生山藩の大名 松平和泉守信房が置かれているのは、まさに「こんな八方塞がりの状況」だ。
領地の石高は3万石。一石とは「一人の人間が1年間に食べる米の量」なので、丹生山藩はおおよそ3万人分の人間を1年間養えるぐらいの生産性を持つ土地、と幕府に見なされていることになる。加賀百万石や伊達六十万石に比べたら微々たるものだが、一応は領地にお城を持つことが…
2020/1/2
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大名倒産 上 / 感想・レビュー
starbro
浅田 次郎は、新作をコンスタントに読み続けている作家です。著者の得意なジャンルなので、上巻一気読みです。続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://books.bunshun.jp/articles/-/5195 https://books.bunshun.jp/articles/-/5160
2019/12/28
やま
物語は、大政奉還(1867年)の五年前の文久二年(1862年)。舞台は、江戸。字の大きさは…小(字が薄い)。悪辣な先代藩主は、藩をこれ以上持ちこたえられぬと思い、藩の計画倒産を企てる。その話を長男に話すと、あまりのことで病弱な体に刺激が強く急死してしまいます。そこで、捨てていた妾腹の四男・小四郎を当主にして、最後は、責任を取らして切腹させて終わりにする事を計画します。お隠居様(先代藩主)が、計画倒産を企てていることを全く知らない、糞真面目な小四郎21才は、長男の急死で急遽、🌿続く→
2021/05/21
パトラッシュ
うまい時代小説を書かせたら右に出る者はいない点で、浅田次郎は山本周五郎の後継者だと思う。何よりもテンポのいい語り口で読者を物語へ引き込む手腕は見事だ。ただ、周五郎があくまでも善悪共に真面目な人間像を描くのに対し、浅田はコミックリリーフを遠慮なく投入してくる。同じ大名家のお家再興がテーマながら、長年月をかけて一歩ずつ理想実現のため苦闘する家老を描く『ながい坂』とは正反対に、本書は貧乏神や七福神まで走り回って大騒ぎを展開する。その点を気に入らない読者もいるだろうが、実にもったいない話ではないか。(下巻に続く)
2020/01/10
Galilei
秒読みの破綻。登場するのは大店から、鴻池、三井、現在ならメガバンク。大黒屋は大手商社、仙藤はコンツェルン。主人公和泉守は、幕府から領地を借り受けて農業と政治を担う或る種の第三セクターかも?第三セクターなら、殆どが債務超過で経営破綻だろう。△先代が手練手管の計画倒産を企てる中、和泉守の巨額負債への苦悩は自身でも計り知れない。とはいえ、庶民出身の目線と持ち前の品性ある思慮深さにより、情報開示と大胆な藩の構造改革、さらに新事業の開発。1千兆円を超す負債の日本が求める若いリーダー像を、作者は訴えたようだ。
2020/10/12
修一郎
年一万両歳入,借金二十五万両,利子年三万両ってたまげた破綻藩だっ,と思ったら幕末の大名はこんな感じばっかりだったそう。名高い薩摩藩調所広郷の500百万両250年分割払いは史実だし越後丹生山藩計画倒産改易狙いってのもいかにもありそうだ。真面目が取り柄の若き殿様の痛快財政再建劇,江戸末期に積み重なった繁文縟礼の数々だったり,井戸水を売るだけで商売になっただとか,江戸文化蘊蓄たっぷり。面白い!下巻では七福神が大活躍に違いない。下巻へ!
2020/04/09
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